◆025◆別れを惜しんで

 「放せよ」


 僕は、エジンを睨む。

 どういうつもりなんだ。

 あ、そっか。リゼタと二人っきりにしたくないのと、余計な事言わない様に見張る為か。

 リゼタは、言い出したら聞かないからな。


 「もう喧嘩しないの」


 「僕はまず、この子達を森へ帰してくるから」


 「じゃ、私もついてい……」


 「大丈夫だから! ちゃんとここに戻って来るから二人で待っていて!」


 「そうしようぜ。リゼタ」


 少し嬉しそうにエジンが言う。本当に好きなんだなリゼタの事……。

 リゼタの前では、エジンも何もしてこないだろうけど。

 本当は、エジンとなんか一緒に食事したくないけど、この街にいればリゼタを避けられない。僕と、組むつもりだったみたいだし。


 「もう。ちゃんと戻って来てよ」


 「おごってもらえるんだから戻ってくるよ」


 リゼタは、満足そうにうんうんと頷く。

 彼女は何故か、お姉さん風を吹かすんだよね。


 「さあ、二人共森に帰りなよ」


 門の外に出てリリンを下ろし、屈んで二人に言った。

 何となく寂しそうな顔つきだ。


 『一緒に行かないの?』


 『何故あいつらと一緒にいるんだ?』


 「行きたいんだけど直ぐには無理。何かしらないけど、ロドリゴさんが勘ぐってるんだよね。迷惑を掛けたくないから。ごめんね」


 『わかった。そう伝えておく』


 そう言ってジーンは、僕にすり寄った!

 なんて、カワイイだ!

 僕だってエジンといるより皆と居たい。

 ギュッとジーンを抱きしめた。


 『でも、大丈夫なの? 命狙ってるのってあのエジンって男じゃないの?』


 心配そうにリリンが言った。キュイとの会話って、もしかして最初からずっと聞いていた?


 「大丈夫。人前では手を出してこないから。僕としては、ロドリゴさんに気を付けてほしい。あの弓を持った人と一緒にいた人。森で何かしていたみたいだから。一応キュイにも言っておいてくれるかな?」


 『わかったわ』


 『あぁ。伝えておく』


 「あまり遅くなったらリゼタが煩いから行くね」


 僕が立ち上がると、リリンとジーンは森へ走り出す。僕も街の中へ入って行った。


 「遅いんだけど」


 「ごめん。別れを惜しんでた」


 「お前本当にあいつらの事、友達だと思ってんの?」


 そうだよ! エジンなんかよりずっとね!


 「いいだろ別に」


 「でも気を付けるのよ。危ないからね!」


 人差し指を立てリゼタが僕に言った。

 だから何で、一つしか違わないのにお姉さんぶるんだ。


 「はいはい」


 「はいは、一回!」


 はぁ……。


 「あ、ここよ」


 看板には、『どっかり亭』と書いてある。そしていい匂いが辺りに漂っていた。

 お腹空いた。もう何でもいいから食べたい!

 リゼタに続きエジンが、その後に僕が続く。


 「ここにしようか」


 入り口に近い席にリゼタが座る。そのよこにエジンが座った。

 四人席だったので、僕は強制的に二人の向かい側になる。エジンの前はいやだったので、リゼタの向かい側に座った。


 「いらっしゃい」


 ここのおかみさんなのか、注文を取りにきた。


 「大盛三つ」


 「あいよ」


 うん? 大盛しか言ってないけど通じた? リゼタって常連?

 周りを見てみれば、皆同じ物を食べていた。料理は一品らしい。しかも皆、冒険者だった。

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