◇008◇灰色の毛並みのジーン

 目を覚ますと、近くに大きなオオカミがいた!

 いや、モンスターか。

 毛並みが良い灰色の毛。背丈は僕より高く、胴回りだって太い。ピンと立てている耳は、凄くよさそう。口から見える牙が凄い!


 『起きたか? 彼はジーンだ。歩いて山を下りるのは大変だろう。私が送ってもいいのだが目立つ。どうだ?』


 「どうだと言われても……。僕が乗っかっちゃっていいんですか?」


 『本当に話せるんだな。振り落とされない様に掴まれるのならかまわん』


 「ありがとう。助かるよ」


 『さっさと乗れ!』


 「え? あ、はい。えっと、キュイ。ありがとう。テイマーになって戻って来るからね!」


 『楽しみに待っている』


 僕は、別れを惜しむ様にひしっとキュイに抱き着く。つやつやで温かい羽毛。

 抱擁が終わるとよっこらせっと、僕はジーンにまたがった。


 『では、行くぞ!』


 ジーンは、恐ろしいスピードで森の中を駆けて行く!

 落ちる! そう言いたいけど怖くてしがみつくのが精一杯!

 二時間程で、街の近くまで来た。あまり近づくと人に見つかるので、森の出口付近で下ろしてもらった。

 あの凄い速さにも関わらず、ちゃんとリリンも走ってついてきていた。

 やっぱり小さくてもモンスターだ。でもちょっと、フラフラしている。疲れたみたい。


 「ありがとう。じゃ、僕達は行くね」


 そう言って、僕はリリンを抱き上げた。


 『ちょっと歩けるわよ!』


 「そうじゃなくて、君が歩いていたら目立つでしょ? 少しだけ我慢してもらっていい?」


 『し、仕方ないわね。抱っこさせてあげるわ!』


 「ありがとう」


 『やれやれ。ささっと行け』


 僕がリリンの反応に、にっこりしていると、まるで目の前でのろけるなと言わんばかりの口調だ。

 僕は、見た目と中身のギャップが面白いだけなんだけどね。


 「うん。行って来ます」


 ジーンに手を振ると、キッと睨み付けるも尻尾が振らさっていた!

 モンスターも嬉しいと振るんだ! そういう事でいいよね?

 ジーンともお友達になりたいなぁ。


 それにしてもお腹がすいた。

 昨日のお昼を食べてから、何も食べていない。

 さっきの移動でかなりカロリーを消費したような気がする。

 街に着いたら先にご飯を食べようかな?

 街って食べ物高いかな……。


 近くの街ノラノラシチには、父さんが生きている時に一度だけ来た事がある。行った記憶はあるけど、全然風景など憶えていない。

 街の中は広いだろうし、無事にギルドに辿り着けるだろうか?


 などと考えながら歩く事一時間強。

 目指していたノラノラシチ街の前まで辿り着いた。

 街は村と違って、結界の他に塀があり門もある。


 って、今さら思ったんだけど、リリンって街の中に入れないんじゃない?

 どうしよう!

 テイマーの人って、従えたモンスターをどうしてたの!?

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