◆009◆リゼタとエジン

 僕はジッと門を見つめていた。その門は開かれている。そして、門番が二人立っていた。

 その門番が、不審そうに僕を見ている。

 どうしよう。ここに突っ立っていたら怪しいよね?

 でもリリンをここに置いて行けば、モンスターだと殺されるかもしれないし、連れて行って結界で弾かれでもしたら……。

 うーん。困った。


 『いつまでそうしているつもり? どうしたのよ』


 「えっと……」


 何て説明しよう。

 呆れる内容だ。お友達なし! とかになったらどうしよう……。


 「クテュール! 嘘! クテュールだわ!」


 「ま、まさか!」


 自分の名前が呼ばれたような気がして振り向けば、馬車の停留所で馬車から降りた人たちの中に見知った顔があった。

 一人はあの、エジンだ!

 何で、こんな所で会うんだ!

 まだ冒険者登録だってしてないのに!


 「ちょっとどこに行っていたのよ! おばさん心配していたわよ!」


 「え? えっと……」


 「エジンと稽古した後、いなくなったって、おばさん村中探したんだよ」


 さっきから僕にあーだこーだと言っている彼女は、もう一人の幼馴染。名前はリゼタ。一つ年上で、ジョブは魔法使い。魔法の才能があるらしい。僕は、見た事ないけど。

 いつもは村にいない彼女だけど、何で村に戻ったんだろう?

 それにどういう状況になっているんだろう?


 チラッとエジンを見れば、ジッと僕を睨み付けている。

 どうしたらいいんだ? 怪我してないし、崖から落とされたって言って訴えも信じてもらえるかどうか……。何せエジンは村長の孫。村長が何か言ってくるかもしれない。


 「ちょっと聞いてるの!?」


 ぐいっと顔を僕の顔に近づけて来た!

 耳に掛けていた灰桜色の髪がはらりと落ちる。髪と同じ色の瞳でジッと僕を見つめる。

 何か近いんですけど!


 『ちょっとギャウギャウ! 近いわよギャウギャウ! 離れなさいよギャウギャウ!』


 「きゃ! え? 何を連れているの!?」


 僕の腕の中で、リリンが叫んだものだからリゼタは驚いて、僕から離れた。

 リリンは、リゼタを睨んでいる。

 お願いだから襲い掛からないでね。


 「えっと。お友達」


 「お友達って、それモンスターだろ?!」


 リゼタの後ろに立って、僕の様子を見ていたエジンが驚いて言った。というか、恐れているような感じだ。

 そう言えば、キュイが脅して森から出て行かせていたっけ?


 「うーん。もしかしたら僕、テイマーに目覚めたかも」


 「はぁ?! 何言ってんのお前」


 そんな事ある訳ないだろうという顔でエジンが言うから、僕は彼を睨んだ。すると、ビクッと体を震わす。

 どうやら今の一言が効いて、僕にも怯えているみたい。

 普通なら助かっていないもんね。それがモンスターを引き連れて? 現れたんだから。

 って、テイマーだとつい言っちゃった。後には引けなくなった……。リリンを何とかしないと。

 エジンには対抗できそうだけど、ここでテイマーじゃないって事になったら大変だ!

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