◆007◆ツンデレ!?リリン

 あぁ、なんか照れる。


 『で、さっきの話なのだが、あまりに大きいと人間達も怖がるだろう?』


 「さっきの話?」


 なんだっけと僕は首を傾げる。


 『殺そうとした者と対等になる為に、冒険者になる方法だ。リリンがちょうどよいと思う。もうそろそろ、来る頃だろうし』


 『もう、来ておりますわ。キュイ様。びっくりしました……』


 僕は、木の陰から声が聞こえ、ビクッと肩を震わせた。

 振り向けば、誰もいない?!

 確かに女性の声が聞こえたのに!

 僕はキョロキョロと辺りを見渡す。


 『ここよ!』


 驚く事に、ぴょんぴょんと跳ねてこちらに向かって来る!

 兎だ! 青紫色の兎!

 森の中は薄暗いし、まさかこんなに小さいと思わなかったから気づけなかったよ!

 モンスターとは思えない程、小さい。いや普通の兎と同じ大きさ。

 つい僕は、ジーッと見つめてしまった。


 『な、何よ! 弱っちいと思ってるんでしょ!』


 「え! いや、そんな事はないよ。可愛いとは思うけど……」


 『な、何よ! そんな風に口説いたってダメだからね!』


 「え……」


 口説くって……。いや兎みたいで可愛いって意味だったんだけど。

 この子と一緒に行くって事だよね?

 何か怒ってるけど、大丈夫かな?


 『リリン。そう照れるな』


 え? 照れていたの!?


 『べ、別に! いい? キュイ様の命令だから一緒に行くんだからね! ほら早く屈みなさいよ!』


 あぁ……。これが世に言うツンデレかぁ。まさかモンスターのツンデレに出会うとは。

 僕は言われた通り屈むと、リリンは軽くジャンプした!

 そして僕の頬をペロッとなめた!


 「うわぁ!」


 『うわっとは失礼ね!』


 「えっと。ごめん……」


 いやまさか、友情の証の儀式? をするとは思わなかったから……。

 一応、認めてはくれてるんだ。


 『何よ。返さない気?』


 「あ、はい。じゃなくて、返します。えっと……」


 滅茶苦茶照れるんですけど!

 だって相手は、一応女性なわけで。歳は知らないけど。

 ほっぺにしてもいいのかな?


 チュ。

 リリンのほっぺは、フワフワでくすぐったかった。


 あぁ! 僕、今きっと顔が真っ赤だ!


 『さて今日は、ここで寝て、明日向かうといいだろう。もう日が暮れる』


 言われて空を見上げれば、赤く染まり始めていた。

 ぎゅるる。お腹がなった! なんかお腹空いた。


 『これ食べれるならあげるわ!』


 リリンが目の前に、木の実を置いてくれた。

 これ、人間でも食べれる物なのかな?


 『たぶん、人間でも食せるとは思うが……』


 「にが~!!」


 キュイがそう言ったので、少しかじってみたけど、滅茶苦茶にがかった!

 今日は食べるのを諦めよう。

 明日、街におりたら何か食べよう。


 「あ、食べれないけど、街で売れるかもしれないしもらっておくよ。ありがとうリリン」


 しゅんとしてしまったリリンにそう言うと、彼女はほほ笑んだ。

 可愛い! 見た目兎だし。

 僕は、キュイに寄りかかり眠りについた。リリンを抱きしめて、ぐっすりだった……。

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