最終話:(本編終了)幕間
「さすがは救世主様だと思ったよ。あんなに可愛らしいお嬢さんなのに、実に逞しい」
一人掛けのソファに座り、クツクツと肩を揺らして笑うリオルート。
テーブルには酒とグラス。
正面に座るのはハリアス。
ハリアスは残念だと言いたげに溜め息を吐いた。
「なんで私も誘ってくれなかったんですか」
「すまない。まさかあそこまで面白い展開になるとは私も思わなかったからな」
「しかし、安心しました。あのお二人がうまくいくことによって、今のこの国の現状の先に、平安な未来が期待できる」
「確かにな・・・・・・。だが、ずっとあいつを見てきた兄としては不満が残る。たった三日だぞ? 出会って三日で相思相愛なんて、ずるくないか?」
そのリオルートの言いように、ハリアスは笑みをこぼす。
「リオルート様は昔から言ってましたね、恋愛ごとに関して冷めた態度を貫いていたライツ様に、本気の相手が出来た時が楽しみだと」
「そうだ。恋に悩み苦しむ弟を、兄として応援してやるつもりだったのに、まったく出番がなかった。ああ、残念だよ」
*
「ナチェル!」
廊下を歩いていたナチェルが、後ろからモランに呼び止められ振り返る。
「何だ?」
「別に用という用はないが、あのお二人は?」
「部屋に入られた。おそらくまだ二人きりで話したいことがあるのだろう」
「そうか。しかしよかった。マナさまにはずいぶん驚かされたが・・・・・・神様お墨付きのお二人だからな。きっと一年後には、魔物なんかに振り回されない平穏な日々が来ているだろう」
「・・・・・・そうだな」
「もしそうなったら、俺たちも結婚も考えなきゃな」
その言葉にナチェルが目を丸くしてモランを見た。
「いきなり何だ?」
「いや。どうせその頃にはあのお二人も結婚という形を取るだろう。そしたら俺たちも同じタイミングで結婚した方が側近としての仕事がやりやすいだろうと思ってな。おまえもマナさま付きをやめるつもりはないんだろう?」
「当然だ。・・・・・・だがそうか。その通りだな。考えておく」
そう言いい残して立ち去るナチェルの後ろ姿をモランが見送る。
(・・・・・・聡いくせに、相変わらず男心にだけはポンコツだな)
モランは深い溜め息をひとつ吐いた。
*
愛那とライツの二人はバルコニーに並べられた椅子に座り、綺麗な星空を見上げていた。
「ライツ様。本当に大丈夫でしょうか?」
「何がだい?」
「やっぱり神様が怒っていないか心配で・・・・・・」
まだ気にしている愛那に、ライツが手を伸ばしてよしよしと頭を撫でる。
「大丈夫だよ」
「でも・・・・・・」
「大丈夫。さっき【鑑定】で確認したんだが・・・・・・」
「?」
「俺とマナに、新しいスキルが出来ていた。しかも同じものだ」
「スキル? どんなものですか?」
「【供給】」
「供給?」
「珍しいスキルだよ。昔、王族の双子同士が持っていたというスキルだ。同じスキルを持ったもの同士で魔力の供給が出来る」
「・・・・・・ライツ様の魔力が少なくなったら、私の魔力をあげることが出来るってことですか?」
「そう。逆もまた然り。神様も怒っていたらこんなスキルを俺達にくれたりしないんじゃないかな?」
「それなら・・・・・・いいんですけど・・・・・・」
(神様からはっきり許すって言葉をいただけないから、まだやっぱり怒ってるんじゃないかなって思っちゃうのよね・・・・・・)
溜め息を吐く愛那。
「ところでマナ」
「?」
「マナのいた世界では、恋人同士になった男女は、結婚するまでどこまで許されるのかな?」
からかうような表情のライツにブワッと愛那が顔を赤くする。
「ライツ様!」
怒った愛那の頭を引き寄せ、ライツは素早くその頬にキスをした。
「マナは怒った顔も可愛いな」
(~~~~~~~~~!!)
愛那は触れられた頬に手を当て、沸騰するように熱が上がった顔を俯かせる。
今のライツは何を言っても何もやっても上機嫌のままだ。
(うわ~ん! もうっ! 好きだけど、好きだから、嬉しいけど恥ずかしいんです!)
愛那は羞恥に震えながら自分ばかり振り回されていることが悔しくて、ささやかだが反撃に出ることにした。
「マナ!? すまない! 調子に乗りすぎた! だから消えるのだけはやめてくれ!」
終
ごめんなさい。俺の運命の恋人が超絶お怒りです。 しーぼっくす。 @shibox
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