第116話:駄目だ。
「ハリアスが・・・・・・。それでわざわざ兄さん自ら?」
「お前がマナを連れて、この最上階の祭壇の間に向かったと報告があったから、扉の契約者の一人である私が来たんだ」
リオルートが数歩歩くと、彼の背後の扉が再び出現した。
これでこの閉ざされた祭壇の間にいるのは五人となった。
「そんなに急ぐ必要が?」
「いや。ただ単に興味があっただけだ。おまえがマナを連れ、神に何を報告するつもりなのかと」
「・・・・・・成る程。のぞき見に来たんですね?」
「失礼だな。堂々と見に来たんだよ」
笑顔でリオルートが答え、ライツが小さく溜め息を吐いた。
その会話を黙って聞いていた愛那は、先程までの戦闘モードを忘れ、ライツへと視線を移した。
(報告? ・・・・・・私、ライツ様が私をここに連れて来てくれた意味を考えてなかった)
反省した愛那がライツへと謝る。
「ごめんなさい、ライツ様。私、つい気持ちが先走ってしまって。えっと、報告っていうのは何を?」
そう問われたライツが困った表情を見せる。
「いや、気づかずにすまない。俺よりも、マナの気持ちの方を優先するべきだった。いきなり救世主としてこの世界に来たマナが、神へ言いたいことがあるというのは当然のことだ」
ライツはそう言って手を伸ばし、愛那の頬に触れる。
そして、愛那を見つめるライツの瞳が突然不安に揺れた。
(もし、今ここで、マナが神に元の世界に戻りたいと願ったとして、その願いが叶ったとしたら?)
「駄目だ」
「え?」
愛那が目の前から消えていなくなってしまうかもしれないという恐怖に襲われたライツは、その瞬間、誰よりも先に神との繋がりを求めた。
(鑑定!)
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