第117話:俺は馬鹿だ。



 スキル【鑑定】を使ったライツの目の前に文字が浮かぶ。


 名前:マナ・サトウエ

 性別:女

 年齢:17

 体力:700/800

 魔力:998200/1000000

 称号:【異世界からの召喚者】【運命の恋人】

 スキル:【言語理解】【透過/30】【風魔法】【火魔法】【水魔法】【地魔法】【光魔法】【闇魔法】


「!?」

 いつも【鑑定】と共についていた【神託】が無い。

(・・・・・・そうだ。すっかり忘れていた。初めてマナを鑑定したあの時も神託がなかった)

【運命の恋人】である愛那と出会えたことで【神託】がなくなってしまったのだろうか?

(神様・・・・・・。どうか、俺の声にお応え下さい)

 しかしその声に応えはない。

「ライツ様?」

 様子のおかしいライツに愛那が声をかける。

 その声にライツは改めて愛那と視線を合わせ、自分の中の焦りを落ち着かせた。そして、彼女の頬に触れたまま問う。

「・・・・・・マナ。どうして、風魔法以外の魔法を五つも使えるようになっているんだい?」

「え?」

 ライツが以前愛那を鑑定した時のスキルは【言語理解】【透過/30】【風魔法】の三つだけだったというのに【火魔法】【水魔法】【地魔法】【光魔法】【闇魔法】の五つが増えている。

「魔法? ああ! ナチェルさんに教えてもらったんです。危ないので、コツを聞いて手の平の上で小さく試しただけですよ? 思い切りやるのは専用の施設でするつもりでしたし。ほら、私、救世主だから。魔物の討伐を頑張らなきゃいけないでしょう? だから・・・・・・。もしかして、ダメでしたか? あの、ごめんなさい。ナチェルさんに教えて欲しいって頼んだのは私なので、ナチェルさんは悪くないんです」

 いつもの笑顔を見せてくれないライツに愛那は不安になってそう言葉を綴る。

「いや、違う。そうじゃない。・・・・・・ごめん」

「?」

(そうだ。マナは救世主としてこの国の為に魔物討伐に意欲を見せてくれていたのに、元の世界に帰ってしまうのではないかと勝手に不安になって・・・・・・俺は馬鹿だ)

「マナ・・・・・・。いいよ」

 ライツが微笑んで触れていた手を離し、愛那から一歩距離を取った。

「兄さんの許可ももらったんだから、気兼ねなく神に言いたいことを話すといい」 



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