第48話:夢じゃなかった



 愛那の目がゆっくりと開かれる。

「・・・・・・」

 ぼーっとしながら小さく呟く。

「やっぱり夢・・・・・・」

 寝る前と同じ天井。

「・・・・・・・・・・・・じゃ、なかった」

 大きなベッドの中で寝返りを打つ。

(そうかぁ。夢じゃなかったんだ・・・・・・)

『マナ』

 ライツの笑顔と愛那の名を呼ぶその声。

 思い出して頬が熱くなる。

(私に都合のいい、夢じゃなかったんだ・・・・・・)


 昨日、あれから愛那は、ライツと、ハリアス、モラン、ナチェルも一緒に夕食を食べた。

 やはりというか、お箸じゃなかった。

 ナイフ、フォーク、スプーンを使うコース料理だった。

 とても美味しかったけれど、もしかしてこれから先、お米や味噌汁、味付けのりにお新香に納豆、卵かけご飯! 他にも、当たり前に食べていたものが食べられなくなるのかと思うと、愛那はすごく切なくなった。

 この世界の食について、いろいろ知りたい・・・・・・。

 だが、昨夜それよりも愛那に衝撃を与えたことがあった。

(この世界には、おトイレがない!?)

 食べたものは全て体の中でエネルギー変換されるらしい。

 確かに愛那はこの世界に来てトイレに行きたいと思わなかった。

 お風呂もない。

 この世界の人間は当たり前に浄化魔法が使える。

 そういった生活する上で必要な魔力は誰しもが持っているらしい。

 魔法使いと呼ばれるのは、特別な魔法が使えるくらい大きな魔力を持つ者のことだそうだ。

 魔力。

 愛那は自分の中にそれを感じることが出来る。

(お母さん。愛那は異世界に来て、違う生物になってしまったようです)



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