第44話:そう呼んで欲しい



 別邸の一室に衣装部屋があり、そこへ移動した愛那とナチェル。

 男性陣はその部屋の前で待機している。

「それでは救世主様、お姿をお見せ頂けますか?」

 そうナチェルに言われた愛那は、魔法を解く前に言ってみた。

「あの・・・・・・。その救世主様と呼ばれると、なんだか落ち着かないので止めてもらっていいですか?」

「わかりました。では、マナ様とお呼びいたします」

「様もちょっと・・・・・・。呼び捨てで構いませんので」

「いえ。救世主様に対しそれは出来ません。お許し下さい」

 頭を下げてお許し下さいとまで言われると、愛那はそれ以上強要することは出来ない。

「わかりました。では、それで・・・・・・」

「わたしのことはナチェルと、そのままお呼び下さい」

「・・・・・・えっと、私のいた国では平民とか貴族とか、そういった階級的なものはほとんどなくて、年上の方を呼び捨てにするのはとても失礼に感じてしまうんです。なので、ナチェルさんと呼ばせていただいてもいいですか?」

「マナ様・・・・・・」

 ナチェルは救世主である少女の願いに躊躇したが、すぐに微笑んでみせた。

「わかりました。そのようにお呼び下さい」

 そう伝えると、見えないのに笑顔が想像できる「ありがとうございます!」という嬉しそうな声が上がった。

(可愛らしいお方)

 ナチェルは愛那に好感を抱きながらも、救世主という偉大な初代国王のイメージとあまりに違うことに戸惑う。

「では、魔法を解きます!」

「はい」

 そうしてナチェルの目の前で、救世主の少女が徐々にその姿を現し始めた。



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