第43話:魔法を解けば分かる。



 ライツの笑顔を甘く感じたのは愛那だけではなかった。

 ここにいるライツに使える三人もその甘さに愕然としていた。

(あのライツ様が・・・・・・。リオルート様にお伝えしたらどのようなお顔をされるだろうか)

(嘘だろ。この人、こんな表情出来たんだな)

(どんな女性に対しても、一定の距離を保たれていたこの方が・・・・・・)

 ナチェルの目の前で今度はコップが宙に浮く。

 浮いたコップが傾いて、柑橘系のジュースが消えてゆく。

 常に冷静であれという信念を心で唱え、心を落ち着かせたナチェルがライツへと声をかける。

「ライツ様」

「ああ」

「そちらにおられるのが、救世主様なのですね?」

「そうだ」

「あの!」

 コップがテーブルへと戻される。

「マナ・サトウエです! よろしくお願いします!」

「ルザハーツ騎士団、ナチェル・ミューラです。救世主様にご挨拶できることを光栄に思います」

 右手を胸に当て、一礼するナチェル。

(ひあぁ、女騎士様、やっぱりかっこいい~!)

「ナチェル。この通りマナは透過のスキルを持っている」

「透過のスキル? では、お姿の見えない今の状態が本来のものでないということですね?」

「その通りだ。この魔法を解いてもらおうと思ったんだが、問題が生じてな」

「問題? どのような?」

「それは・・・・・・マナが魔法を解けば分かる」

「?」

「マナの透過スキルに関して、ここにいる者以外に知られないように。ナチェルには、マナの護衛と身の回りの世話を頼みたい」

「承りました」

「では、さっそくだが、マナの着替えを頼む」



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