第45話:二人きりにしてくれ。



 扉が開き、待機していたライツ達が顔を向ける。

 部屋から出てきたナチェルが扉を閉めた。

「お待たせいたしました。ライツ様」

「着替え終わったか」

「はい。とりあえず衣装部屋にあった服から選んでいただきました。マナ様の体のサイズを測らせていただきましたので、新しい衣装は明日ご用意いたします」

「頼む」

「それと」

 ライツへ向けるナチェルの眼光がやや鋭くなる。

「ライツ様のおっしゃっていた『魔法を解けば分かる』についてですが」

「あぁ」

「驚きました」

「だろうな」

「見たんですか?」

「!」

 ナチェルの問いにライツは顔を赤くして答える。

「少しだけだ! 気づいてすぐに目をそらした!」

「・・・・・・わたしは救世主でいらっしゃるマナ様を、護衛として全力でお守りしようと思います」

「・・・・・・頼もしいな。マナのことは俺が一番に守るつもりでいるが、異性だから気づいてやれないこともあるだろう。その時はフォローを頼む」

「・・・・・・お可愛らしい方なので、その異性からもお守りしたいと思っているのですが」

「・・・・・・マナは、可愛いのか」

(ライツ様。ナチェルが今伝えたかったのはそこじゃありません)

 無言で見守っていたモランが心の中でツッコむ。

「あ、いや。マナは可愛いだろう? 見えなくても俺は本当に姿形関係なくそう思っているんだ。だが、マナが・・・・・・」

 そこで口を閉ざしたライツが表情を引き締め、愛那のいる部屋の方へと歩き出した。

 扉の前で足を止め、三人へと振り返るライツ。

「お前達はここで待て。二人きりにしてくれ」

「ライツ様!」

 ナチェルが声を上げる。

 この世界の常識として、年頃の男女が部屋に二人きりになるというのはありえないことだ。

 ナチェルは異性からも守ると伝えたばかりで、ライツがこのようなことを言ってくるとは思わなかった。

「今回だけは見逃してくれ。・・・・・・俺は、絶対にマナの嫌がることはしない」

 そう言い残し、ライツは扉を開けてその向こう側へと消えた。



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