第12話:ステータスオープン!



(うわあ、綺麗な町並み! これぞ中世のヨーロッパのような、ファンタジーの世界!)


 愛那は透明な姿のまま城下町に来ていた。

 噴水広場にベンチがあったので、そこに座っていったん休憩する。

「海外旅行に来てるみたい」

 水の音に癒やされ、ぽかぽかとした日差しが心地良い。 

 神殿を出たら、そこはお城の敷地内で、そこから脱出するまでかなり時間がかかった。とにかく広かった。

 お城の中を見て回りたい気持ちもあったが、とにかく捕まりたくなかったので必死だった。

 ようやく今、一息つけることが出来たのだ。 

「・・・・・・なんて、和んでる状況じゃないのよね」  

 緩んだ表情を引き締める。  

 この周囲に人の姿はないし、近づいてくる姿もないことを確認する。 

「さて、と。それじゃあやってみますか!」

 愛那は逃げている最中、思い出したことがあって、それを試したくてうずうずしていた。

 異世界召喚された時のお約束。

「異世界召喚? 知ってる。こう言えばいいんでしょ?」

 フフッと笑う。


「ステータスオープン!」


 シ────ン。

 どや顔で、自信満々に言ったのに、何故か何もおこらない。

(・・・・・・・・・・・・?) 

 しばらく待ってみたが、やはり何もおこらない。

「・・・・・・あれ?」

 愛那は首を傾げた。 

(おかしいな? これを言ったら透明な板みたいなステータス画面が出るのはアニメも漫画も共通だったのに・・・・・・)

 自分の能力を知ることの出来るステータス画面。

 他にどんなことが出来るのか、わくわくしていた愛那がショックを受ける。

「お約束っ、異世界召喚された時のお約束でしょ!? 何で!? ステータス! ステータスオープン!」

 やはり何もおこらない。

 ふらりと体をベンチの背もたれに預けた愛那は「えぇ~~~~」と天を仰いだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る