第11話:透明人間になってみた
(えーっと、何だっけ? 話を整理すると異世界召喚された私は勇者でも聖女でもなく、救世主なわけね? それで【強き者】であるあの王子と私が【運命の恋人】同士で? 二人で力を合わせて魔物退治をしてくれって騒いでいるわけね、あの人達は)
冷めた目で前方の集団を一瞥し、愛那は思考を続ける。
(ここにいること事態が違和感だから気づいてなかったけど、言葉がわかる。不思議。日本語じゃないのに話している意味がわかるっていうのは、異世界召喚のお約束なのね)
日本にはアニメや漫画やゲーム、小説などで、たくさんの異世界召喚ものがあるが、愛那はアニメ一作品、漫画一作品だけの知識しかない。ちなみに異世界転生ものの漫画をもう一作品だけ読んで知っているのみである。
(私、救世主なんだから何か凄い力持ってるんじゃないの? 言葉がわかるのだってスキルの一つなんでしょ?)
「レディル様! 王太子として、この国のことを一番にお考え下さい!」
「考えている! 考えているが、譲れるものと譲れないものがあるんだ私には!!」
「殿下!」
(・・・・・・あの人達、私がいなくなったら困るでしょうね。救世主ですもんね、私。・・・・・・びっくりするくらいずっと無視され続けているけど。・・・・・・逃げようかな、ここから。こっそり、捕まらないように。出来ないかな? ・・・・・・たとえば、そう。透明人間になったりして)
愛那が両手を胸の高さまで上げて手の平をジッと見つめる。
(透明になれ、透明になれ)
そう念じ続けると、ポッと体の中に熱を感じた。
(これ、こういうの、魔力だっけ? わからないけど、ある。体の中に感じる。今まで感じたことがない力が)
すると、愛那の体がスウッと消え始めた。
(!! すごい! 本当に消えた! それに、体だけじゃなくて制服も透けてる!)
感動と興奮を同時に味わいながら自分の体をあちこちから確認する。
(よし! ふふっ。それじゃあ、逃げるとしますか)
一応気づかれないように、そうっと立ち上がった愛那は、不敵な笑みを浮かべ歩き出す。
そして入り口で一度だけ振り返ると、自分の【運命の恋人】とやらをもう一度視界に入れる。
(運命の恋人? あれと? 冗談じゃない!!)
フンッとそっぽを向く愛那。
こうして異世界召喚された少女は、神殿から姿を消した。
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