第12話 早すぎる再会



 他国と戦いになるのはまずい。

 俺達は、レストリアの者達から距離をとるべく走り出した。

 すでにこちらの状況はわれているものと考えた方がいい。


 だから身を隠すよりも、その場から逃げる事を優先したのだが……。


 まわりこまれてしまったようだ。


 前方の木々の間から投げナイフが飛んできた。


 ……スピードの速い人間みたいだな。


 木々の影から姿を現したのは、昼間に出会った人間。


「驚きました。貴方達だったとは。こんな所で何をしていたのですか?」


 俺達に追いついたのはあのクオンだった。


「あー、ちょっと散歩にだな」


 無駄だと思いつつも一応言い訳をしてみるのだが。


 相手は眉をひそめて、こちらを避難するような表情をみせる。


「やましいことがないのなら、身を隠したりはしないはずですが。そもそも一般市民が容易に外に出られるはずがありませんし、敵対している国の境の近くにいるはずがありません」


 隙もなく論場されてしまった。

 やはり騙されてはくれないようだった。


「ごもっともで……」


 正論すぎる言葉に、警戒を一段階引き上げる。


 隣に立つキャロがこっちの脇腹をこづいてくる。


「ちょっとオルタ! もうちょっと頑張りなさいよね」

「俺に頭脳労働を期待しないでくれよ」


 自慢じゃないが、腹の裏を読むようなやりとりは得意じゃない。

 仲間内でやった事のある人と狼を見分けるゲームとかでも、かなり初期に役職が割れてしまうくらいだし。

 とにかく、敵認定されてしまったのなら、しょうがない。


 武器に手をかけて、戦闘態勢に入る。


 周囲にそれとなく視線を向けて、環境を確認。


 木の位置や土地の高さを計算に入れる。


 ……こういうところは、苦も無く考えられるんだけどな。


 俺は時間稼ぎをしながら、相手に話しかける。


「クオン個人には恨みはないから、見逃してくれるとありがたいんだけどな」

「奇遇ですね、私個人も貴方に恨みはありませんよ。しかし機密情報を知ってしまったのなら生かして帰すわけにはいきませんので」


 しかし、どうやっても戦闘の回避はできないようだ。


 相手はこちらへの警戒をとかない。


「あ、やっぱり。あの場所でやってたのって機密だったのか。いいのか俺達に喋って」

「構いませんよ、逃がすつもりはありませんから」


 軽口を叩きあう間にも、仕掛けるタイミングを計る。


 ぱっと見で、クオンは武器らしい武器をもっていない。


 が……。

 戦闘は、どうやって行うのか判断がつかなかった。


 敵の戦闘スタイルが分からないというのは、かなり大変だ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る