第11話 秘匿実験
俺達は、茂みに隠れながら遠くの様子を窺う。
ちょうど人を隠すだけの木々があってよかったな。
けれど、数百メートル先では街道になっていたから、気が付くのが遅れたら危なかった。
視線の先には複数の人影がいた。
向こうはこちらに気が付いている様子はない。
キャロが手でひさしをつくりながら、観察する。
「あれ、レストリアの兵士よね。あんな所で何をやっているのかしら」
「さあ。分かんないな。でも、もう国境も近いだろ? なんかあやしいし、もうちょっと様子みてようぜ」
「そうね」
同意の言葉を返すキャロと無言で観察を続ける。
視線の先では、複数の人影が何かの機材を設置して、その周りをウロウロしている。
機材の大きさは結構なもので、ざっと二、三十メートル程の高さと幅があった。
やがて、何かの作業が終わったのか、機材の周りから人が退避していった。
数秒後、機材が光を放つ。
それで何も起こらない。
戻って来た人達は首を傾げているようだ。
キャロも首をかしげてこちらに問いかけてくる。
「何かの実験、研究でもしてるのかしら」
それで失敗した、とかだろうか。
「そうみたいだよな。ん? あの機械の中央、よく見て見ろよ、何か動物がいないか」
話している間に、視線に違和感を感じた。
欲見てみると、動いているものが見える。
「え? どこよ」
「真ん中だって。ほらよく見て見ろよ」
「本当、狼……かしら」
人々が集まっている機材の中心には狼が固定されていて、狼はぐったりしているようだった。
「ちょっと可哀想だけど、助けてあげるわけにはいかないわね」
「そうだな。この情報を持ち帰らないといけないし」
なんの実験に利用されているかは分からないが、ここで俺達が助けにいったら、問題をややこしくしてしまう。
それに、相手の力も分からないのに、飛び出ていきたくない。
強い奴が分かりやすく強い見た目してるとは限らない。
袋叩きにあってから後悔するのは遅い。
同じ結論に達したキャロがその場を離れようとする。
「レストリアの国は、研究者でも護身術を扱ってるって話だし、近づかないに越した事は……」
「もう、遅いみたいだぜ」
けれど退避の決断は少し遅かったようだ。
「え?」
「逃げるぞ、一人こっちに来る!」
こっちの存在が、向こうに気づかれてしまった。
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