第10話 帰路にて



 町の中で情報収集した後、足早にレストリアを出国して帰路へと就く。


 自分達のホームではない場所で動きまわるのは、精神的にかなり疲れた。


 こういうのは得意じゃないんだ。


 嘘をついてるみたいで、嫌な気持ちになる。


 そういった仕事は必要なのは分かるし、そういうことをしてる人を馬鹿にするつもりはない。


 ただ単に、俺には向いていないって思ってさ。


 通りを歩く、レストリアの人々の顔を眺めながら、国外へ続く門の方へ移動する。


「あー、疲れた。帰ったらのんびり布団で眠りたい気分だぜ」

「気を抜かないの。途中で気づかれて追手が来る可能性だってあるんだから」

「へいへい。キャロは真面目だなぁ。それにしても、町の中さ……ぜんぜん活気が無かったよな」


 キャロはそうねと、少し気がかりそうな顔で同意する。


「なんだか重い雲がみんなの頭の上にあるみたい。何かあるのかしら」

「表面からちょっとみただけじゃわかんない事ってあるからな」


 これが数日滞在するって仕事だったら、もっと詳しい事はわかったかもしれないが、俺達の技量がこれが精いっぱい。


 そんなやりとりを小声でしながら俺達は、門番の人のチェックを受けて、外へ出た。


 あっという間だった。


 ……数時間の滞在だったし。収穫はすくなかったな。


 これで、求められた仕事をこなせたのかどうか。正直分からない。


「レストリアでの特筆すべき点は、人々の様子。ってところかしら。ちょっと変だったわよね」

「ああ、そうだよな」


 たわいない話の中で思い出すのは、ついさっきまでいたレストリアの町の中の様子だった。


「見かけ上は普通の町に見えるんだけど、笑顔がすくなかった」


 世界全体の危機だから手放しで笑っていられるような人間は多くないと分かっているけど。


 それにしたって、俺達のところよりかなり少なかった。


「娯楽に繋がるコンテンツが制限されてるみたいだから、その点が影響してるのかもね。あと、適正がある人は強制的に兵士に徴兵されちゃう制度なんかも」


 そういえば、店とかにも入ってみたけど、雑誌とか少なかったな。

 あと玩具とかも。


 たまたまなのかもしれないし、世界中で物流が緩やかに停滞していっている状況もあるかもしれないけど、俺達の国と取らべてみても、やっぱり少ない。


 そう言えば、通りで遊ぶ子供の姿もなかった。


 後は。


「そういや途中で、兵役に就く人を見送ってる連中の姿見たな。口では祝いの言葉を言ってるのに、表情が固かったから、よく覚えてる」

「自分の国に不満があるのかもしれないわね。でもこれは私見。決めつけは厳禁よ。報告に私情をはさむのはもっとだめ」

「分かってるよ」


 外の国の人間には分からない事情もあるだろうし。

 俺達が見たのは一部の面だって事も考えられる。

 全てを知った気になるのは良くない事だ。


 キャロと話しながら本部に報告すべき事を頭の中でまとめていると、遠くに人の気配がした。


 キャロへ、短く警告の言葉を放つ。


「キャロ」

「分かってる、誰かこの辺りにいるみたいね」


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