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わたしは探偵だ。真実をつまびらかにしなければならない。
足がふらつく。それでも止まるわけにはいかない。
わたしは探偵だ。わたしは探偵だ。わたしは探偵だ。
探偵は足で稼ぐ。中等部の寮へ。無数の視線を蹴散らして、目的とする部屋を目指した。部屋を見つけ、ノックする。
「何の用ですか」少女は訝しげに言った。
「マリア様の元に案内してほしい」
少女は目を丸くした。左右を窺い、言う。
「ついてきてください」
われわれは草地の上を歩いていた。
無数の羊たち。
羊たちにはみな角がない。角があるのは山羊だけだ。
「なぜ、わかりました?」
「君は隠し事をするには少し性根がまっすぐすぎるね」
「わたしの演技はそんなに下手でしたか?」
「衣装を修繕する方が向いてはいるだろうね」
「あなたはどこまで知ってるんです」
「おそらくはすべてを」わたしは言った。「君たちが彼女を隠した方法を除いてね。どうやった?」
「マリア様を信仰する仲間は少なくありません」アンナは言った。「それは天使様でも例外ではないということです」
「彼女が最初に相談したのが君だったんだな」
「ええ」
「結局のところ君にとって彼女はどういう存在なんだ。いまだ手のかかる妹なのかい?」
「自分でもよくわかりません」少女は首を振った。「彼女は子供のように笑ってたかと思えば、次の瞬間には聖母様のような顔になるんです」
「なるほど」
やがて幼少部食堂の裏手にまで来た。アンナはポケットから鍵を取り出し、中に入る。
アンナは段ボールをどかしはじめた。わたしも加勢しようとするが、すぐに断られる。
地下に食糧庫と思しきハッチが現れた。少女はそれを開き、さらに、コンテナを持ち上げた。階段が現れた。
「ここから先はおひとりでどうぞ。わたしはここで見張っています」
「ありがとう」
「どういたしまして」
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