2-7

 足音がそのまま通り過ぎることを願った。ドアが開かないことを願った。誰も入ってこないことを願った。照明が点灯しないことを願った。今日はもう誰にも会いたくなかった。早く眠りにつきたかった。寮のベッドに横たわり、声をかけられないことを願っていた。


「サム、もう寝るの? シャワーは浴びた?」


「ああ」


 何を言えばいいかわからない。いったい、どうすればイザベラの不安を取り除けるのだろう。


「昨日はごめんね。わたしも言いすぎちゃった」


「そんなことはない」


 何を言えばいいかわからない。


「そう」


 何を言えば……


「ねえ、明日はどうするの?」


「おそらくまた探偵の仕事だ」


 何を……


「もう、バカ」イザベラが寝ているわたしの額を弾いた。「明日はクリスマスだよ」

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