2-3
探偵は足で稼ぐ。だが、やみくもに動き回ればいいものでもない。
日が傾きはじめた。太陽が二つの山に挟まれるようにして沈んでいく。十二月の風がスカートをはためかせ、髪を揺らした。吐く息は白く、手は寒さで感覚がなくなっていた。羊たちの体毛がうらやましい。
わたしは探偵だ。探偵には忍耐が必要だ。
わたしは凍えながら待った。彼女が来るのを……
「あれれ、探偵さんじゃん」少女は白々しい口調で言った。「まだいたんだ。こんな寒い中どうしたの?」
「ここで待っていれば、話したがりの誰かさんが相方に適当な理由をつけて抜け出して来るんじゃないかと思ってね」
「そっかそっか。でもさ。こんなとこで待ってたら冷えるよ。あったかいとこに移動しない?」
「しかし大事な要件だからね」
「それってアグネスの話より大事?」
わたしは探偵だ。それがときに進むべき道を照らす光となる。
「やれやれ、しょうがないな」わたしはわざとらしくため息をついた。「付き合うとしよう」
「そうこなくっちゃ」少女は蠱惑的な笑みを浮かべた。「じゃ、ついて来てよ」
わたしは少女の言葉に従った。
「アグネスね、あれで……って言ってもわかんないか。けっこう抜け目なかったんだよ。それに、籠の中の鳥にしとくには好奇心が強すぎた。なまじ、お姉ちゃんがアレでしょ。たまには羽目を外したくなるってわけ」
「それはきっと君も同じだったんだな」
「ご明察」クララは笑った。「わたしたちが友達になったとき、最初に話したのはあのお姉ちゃんのグチだった」
「君たちはどんな羽目の外し方をしていたんだ?」
「それをいまここで説明するのは難しいかな」
「ならどこに案内してくれるんだい?」
少女はくるっとこちらに向き直り言った。
「魔女の集会所に」
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