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「誰だったんだい?」


「依頼人だよ」わたしは答えた。「いたのか」


「ああ」ソフィーは言いながら、わたしのすぐ隣まで歩み寄った。柵にもたれかかり、問う。「ところで聞いたかい。中等部でまた誰かいなくなったそうだよ」


「どうりで天使たちがあわただしくしてたはずだ」


「ああ、昨日から姿が見えないらしい。あるいはまた君にお鉢が回ってくるかもね」ソフィーは笑った。「何せ君はこの島きっての名探偵。失せ物を見つけ出す天才なんだから。この前いなくなった学生を見つけたのだって君だと聞いているよ」


「やめてくれ。今日もまたその肩書のせいで余計な重荷を背負わされたんだ」


「というと?」


「さっきの依頼人だよ。あれが例のいなくなった学生、アガタだ」


「君が見つけた学生のこと?」


「ああ。今日、高等部の教室を訪ねてきた。わたしに依頼だそうだ」わたしは少し間を置き、「彼女、なんて言ったと思う?」


「さてね。ハンカチでもなくしたかな」


「記憶を探してほしい。そう言ったんだよ」


「見つかったとき、記憶がなかったというのは本当だったんだね」


「ああ」


「今回の件、何か関係があると思うかい?」


「さあな。それは失踪した当人に訊いてみるしかないだろ」


「もしも彼女も記憶を失っていたら?」


「思い出すまで待つしかない。尤も、わたしとしては教室に押しかけてくる後輩がこれ以上増えるのは勘弁願いたいところだが」


「君は頼まれれば断れないものな」


 言い返そうとした瞬間、屋内につながるドアが開いた。息を切らした様子で、高等部の学生が屋上に飛び込んでくる。


「サマンサお姉さま。ママがお呼びです」

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