誕生日、おめでとう

「誕生日、おめでとう」


今日は、八月四日。私の十二回目の誕生日。一応、誕生日パーティもする。


一応っていうのは、まああんまり派手にはやらないっていう意味だ。


私はケーキが基本好きじゃない。甘いものが苦手だから。抹茶こそ至高! ケーキも用意してくれてるけど、これは友達の分。って、そうだ、パパに言っとかないと。


「あ、今日、しーちゃんとむっちゃんも来るから」


しーちゃんというのは椎名しいなちゃん。むっちゃんというのは睦美むつみちゃん。二人ともうちにはあまり来ないけど、学校とかではよく一緒にいる友達だ。ゲームとかアニメの話で盛り上がれるから。


「なんですと!?」


パパがびっくりしたみたいに声を上げた。やっば~、さすがに当日朝に言ったのはマズかったかな。


「ぐわ~! そういうのは先に言っておいてくれよ~!」


ってパパが。


「ごめ~ん。でも、昨日急に来れることになったんだも~ん」


これはホント。だけどパパに言われちゃった。


「って、昨日分かってたんならその時に言わんか~い!」


「にゃ~っ! 許されて~♡」


パパは、イライラした感じで頭ごなしにガミガミ言うことはしないようにしてくれてる。困ったことがあってもアニメとかのシーンみたいに大袈裟にリアクションしながら言ってくれる。だから怖くないし、だけど困ってるんだなっていうのは私にも分かる。私も気を付けなきゃって思えるんだ。


よっしーとかも言ってたけど、ただガミガミ言われるのってつい反発したくなるんだよね。その点、パパの言い方は、言いたいことも分かるし反発したいって気にもなりにくいんだ。


大人でもそうじゃないかな。頭ごなしに偉そうに言われるだけじゃ、本気では従いたいって思えないよね。言うこと聞いてるふりはしてても、腹の中じゃ舌出してたりするよね。それでさ、何かチャンスがあったら仕返ししたいとかヒドイ目にあえばいいとか思ってたりするよね。


裏じゃそんなことを思ってるのに自分は会社とかでイヤな目にあってばっかりとかグチ言ってる人って、変だと思う。チャンスがあったらヒドイ目に合わせてやりたいとか、そんなの犯罪予備軍じゃん。


私はパパに仕返ししたいとか思わないよ。パパは頑張ってくれてるもん。


今だって、宅配ピザを追加注文したりって。


って、これは私のせいか。テヘ♡


そんな私にパパは、


「ま、いいや、ほれ、誕生日プレゼント」


と言いながら現金五千円を渡してくれる。これがいつもの誕生日プレゼントなんだ~。


『現金が誕生日プレゼント!?』って変に思う人もいるかもだけど、私の好みってマニアックだからね~。そっちの方がいいんだ~。


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