一番はママ。二番目がパパ

パパは料理は苦手だ。作れないことはないみたいだけど、はっきり言って美味しくない。『食べられないことはないレベル』っていうだけ。


だからスーパーのお惣菜とかで済ましてくれるのはむしろありがたいかな。そんなにひどいハズレもないし。


パパは言ってた。


「文句があるなら自分で作るように」


って。でも、別に文句ないんてないよ。それなりに食べられるものならそれでいいよ。だから言ったんだ。


「やだ~、メンドクサイも~ん」


ってさ。


実は私も、ハンバーグくらいなら作れるんだよ。学校の<家庭の授業>で習ったんだ。まあまあ美味しいと思うよ。だけどな~、気が向いた時でないと作りたくならないんだよな~。それにお惣菜で十分だしさ~。


パパは私に、『何でもかんでもちゃんとできる立派な人間になれ』って言わないんだ。だって、パパがもうその<立派な人>じゃないから。


パパはこうも言ってた。


「お父さんは、大好きなママのことも守ってあげられなかった駄目な奴なんだ。だから、偉そうなことは言えないよ…」


って……


その時のパパの泣きそうな顔を見たら、私も泣きそうになった。


アニメとかだったらここで、


『そんなことないよ! パパは立派な人だよ!』


とか言ったりするかもしれないけど、なんかそういうのってホントにこういう時に言うと逆に白けそうな気がしてしまって言えなかった。ただ黙ってパパにしがみつくしかできなかった……


パパはホントにカッコいい男の人じゃないと思う。


イケメンじゃないし、頼りないし、力とかはもちろん私よりはずっと強いけど、悪い人をぶっ飛ばせるって感じはぜんぜんないし、家ではパンツ一丁だし。


だけどね。私は好きなんだ。パパのことが。


一番はママ。二番目がパパ。


だからね、ママが亡くなった今では、生きてる人の中ではパパが世界で一番好きなんだよ。


どんな人よりもずっとずっと大好き…!


だからパパを困らせたりとかしたくない。大好きだから…!


パパにはいっぱいいっぱい甘えたいけど、他の人にイジワルとかしてパパが悲しい顔したりするの見たくない。


だから私は決めてるの。甘えるのはパパだけにしようって。パパ以外の人に甘えようとか思わないようにしようって。


パパも、そうしてほしいって思ってる。


だって言ってたの。


「他の人に意地悪したりする美智果なんて見たくないな…」


って。だから他の人にイジワルとかしないの。


私の二番目に好きなパパがそう言うから。


でさでさ、不思議なんだ。イジワルな人って、そんなことしてパパとかママが喜ぶのかなって。


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