第4話 愁い嵐の鳥のうた
知らんぷり
僕は鬼さんこちら、とかなんとかいう童謡を思い出していた。何だっけあの歌。あまり良く見えない視界の中、彼女らのキャハハという笑い声を頼りに時々人にぶつかりながら街を歩いていた。僕は鬼じゃないとか、人混みが苦手だとか細かいことが気にならない。いくらチキンでいろんなことを忘れる鳥頭の僕でも、こんなによくわからない彼女らについていくほどバカではない、はずだった。
時々止まっては、道行く仮装パーティに参加したり写真を撮られたりしながら、彼女たちの目的地へと歩いた。若い魔女っ子のところだった。ミイラ男と楽しそうに酒を飲んでいる。
「ねーお姉様」
「あ、あんたたち何連れ歩いてるの?」
「鳥さん拾った」
「捨ててきなさい」
「いやいや僕、ちゃんと帰れます」
「で?」
「鳥になりたいんだって」
「…ふうん」
僕そんなこと話したかなあ。魔女っ子も僕をジロジロと眺めて、なんだか薄気味悪く笑った。
「いいね、ちょっと退屈してきたからいいかも」
「え?」
魔女っ子の手が光ってる。ライトでも仕込んでるのかな。あれ体が軽くなっていく。ふわっと浮かび上がって、僕は人混みから離れていく。
バイバイと僕を見送った鬼たち
魔女っ子が嬉しそうに笑うのが悔しい
汗かいてきた
道行く人や人混みが僕を見上げる
人がゴミのように見えたあたりで落ちた
死ぬ、怖い
なぜこんなことになっているんだろう
そんな嵐のようなぐるぐるの中
僕は両手に羽があることを
今思い出した
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