第156話 俺は職業を吟味したい

「はぁ……はぁ……こいつ、何回死んでも元気だな……」

「HAHAHA!わしは何度でも生き返るのじゃ!」

 スキル『背負い投げ』を覚えてからも十数回ほど投げたが、王様は反省するどころか、生き返る度に元気になっているような気もする。

「ハーレムクソ野郎の話は冗談じゃから安心せい。わしにそんな権限はないわい」

「騙しやがったな……」

 まあ、この王様の言うことにいちいち付き合っていたら、いくら時間があっても足りなくなることはよくわかった。だから、俺は無視して職業選択に戻ることにする。



 職業名:『勇者』

 内容:この世界のラスボス、魔王を倒すという使命を掲げた勇敢なる者。これはゲームなので、勇敢でなくてもこのジョブは選択できる。

 他のジョブよりもレベルアップに必要な経験値が多いものの、強いスキルをゲットできる可能性が高い。前衛でバリバリ戦いたい人にオススメ。


 職業名:『魔法使い』

 内容:はるか昔、世界平和を望む魔王と世界征服を企む魔王、2人の魔王が対立した時代、世界平和を望む魔王とその家臣の魔族たちが敗れ、秘境の里へと身を隠した。その子孫が今の魔法使いである。

 大半が都会へと出ていってしまい、魔族と人間の混血が生まれてしまったため、ある程度の魔法は普及しているが、強力な魔法と膨大な魔力を併せ持っているのは、混血のなされていない魔法使いのみであると言われている。……という設定。


 職業名:『シーフ』

 内容:盗みを生業とするものたちの総称。このジョブを選ぶなら、ゲーム内で友達が出来づらくなることへの覚悟を決めて置く必要がある。

 高い火力も強力なスキルも基本的に覚えることはないものの、10レベル程で必ず覚えることの出来る『スティールアタック』は、敵のスキルを奪い、それを1度だけ発動できるという優れものである。

 もちろん人から盗みを働くことも出来るが、犯罪行為なので見つけ次第罰則を課されることになる。


 以上が人気職3つの内容になるんだが……なんというか、全部にメタいものが入ってるよな。『ゲームだから』とか、『……という設定』だとか。シーフに関しては、『犯罪行為』とまで言っちゃってるよ。

 まあ、俺はあまりしっくりくるものがないし、他を探すつもりだから別にいいけどさ。勇者とか魔法使いとか、かっこいいとは思うけど在り来りすぎるもんな。シーフはもはや思考の片隅にも置いていない。

 俺は『人気職』のページを横にスライドして、『GFFが情報が欲しがっている職9選』のページへと移動する。これはまた珍しいものもあるんだな。

 俺は1つ目から順に目を通すことにした。



 職業名:『テイマー』

 内容:どことなく安らぎを与えてくれそうなオーラを出すジョブ。この職業を選択することで、生き物ならなんでも使役することができるようになる。

『テイマー』はレベルとは別に、ジョブランクというものを持っていて、使役をするほどランクが上がっていく。低ランクの時点では小さな虫程度しか言うことを聞いてくれず、ランクを上げるごとに使役できる対象が増えていく。

 中ランクで『プラントテイマー』に進化。虫と植物を使役することが出来る。

 高ランクで『バイオテイマー』に進化。動物も含め、人間以外の全ての生き物を使役することが出来る。

 最高ランクで『ピクシーテイマー』に進化。生き物はもちろのこと、妖精族の使役もすることができるようになる。妖精の力を借りることで、多少の魔法が使えるようになる。


 職業名:『ヴァンパイア』

 内容:人間族、魔族、魔法使い、どの種族にも属さない第4勢力。基本的に太陽の光を嫌うと思われがちだが、長時間当たり続けなければ意外と平気。血を吸うことで力を蓄えられるが、レベルが上がれば経験値を吸い取るスキルも手に入るかもしれない。

 闇に紛れたり、空を飛んだりなども出来、機動力戦闘力共に長けたジョブである。


 職業名:『くノ一』

 内容:別名女忍者。ファンタジーな世界観にそぐわないジョブであると思われがちだが、現実に存在したくノ一とは違い、魔力で作り出した手裏剣を投げたり、敵に化けたりなどするため、120%ファンタジーである。

 ハイディングのステータスが他のジョブよりも高く、隠密行動がしやすいため、『アサシン』と呼ばれることもある。

 ちなみにGFF職員には、女忍者もののアダルティなビデオを好むものが多いという調査結果が出ているため、9選に選ばれたとも言われている。


 職業名:『巫女』

 内容:レベルが上がれば、魔族をも消し去るほどの浄化スキルを手に入れるジョブ。一般的な見解から、女性専用職となっている。

 テストプレイにおいては存在しないが、『宮司』と同パーティーにいると、全ステータスがアップする。また、『プーリースト(神官)』と同じパーティだった場合、コンボスキルが実装されている。

 ちなみに、白い紙のついた棒はファンタジーの世界観に見合わないので、未だ実装されていない。


 職業名:『癒術師』

 内容:名前の通り癒す力を持った魔法使い。攻撃魔法を覚えづらい代わりに、パーティ全体を対象とした回復魔法や、状態異常を回復する魔法、バフを付与する魔法などが使えたりもする。

 先頭で前線に立つのは不向きなジョブではあるが、いざと言う時のために物理攻撃という手段も持っておくといいかもしれない。


 職業名:『ネクロマンサー』

 内容:別名死霊使い。その名の通り死霊を扱うジョブで、お化けが苦手な人にはおすすめ出来ない。敵としては強いのに、仲間になったら弱いよね!というゲーム特有の現象を参考にしており、倒したモンスターを一定確率で弱体化使い魔として使役する。ただし、使役できる対象の数や強さは、レベルに応じて変化する。

 また、大半の『ネクロマンサー』は世界征服派の魔王軍に属しており、冒険者となった者は逃げ出した一部の魔族である。そのため回復魔法の一切を受け付けない。ただし、回復薬や薬草では回復し、MPマジックポイント回復アイテムでもHPを回復することが出来る。


 職業名:『アルルカン』

 内容:別名道化師。装備アイテムとして2つの仮面を初期状態から所持しており、仮面を装備していない時は、ほとんどのスキルを使用することが出来ない。

 本来の道化師としてのイメージから、パーティ全体の士気を上げるスキルを使ったりもするが、それは白い仮面を装備している時に限られる。

 黒い仮面を装備している時は、殺気や存在感を隠すスキルに加え、低確率ながら対象を一撃で仕留められるスキルも覚えることがある。

 2つの仮面を使い分ける様から、『光影こうえいのアサシン』 『二面相』 『殺人ピエロ』とも呼ばれる。


 職業名:『パラディン』

 内容:別名聖騎士。厳しい特訓により、白魔法こみを使うことができるようになったナイトのこと。

『魔法使い』でも『ネクロマンサー』でもなく、あくまで人間族であるため、回復魔法も有効。

 騎士として近接攻撃が得意なため、前線で戦うことが多いが、いざと言う時は弱回復も行うことが可能で、1人いるだけで戦闘の幅が広がる。

 光を発する魔法を多く使うため、『光騎士』 『ホーリーナイト』と呼ばれることもある。

 また、中には厳しい特訓ではなく、怪しい商人から買った危ない薬で魔法を使えるようになった者もいる。彼らはいずれ白魔法を使用できなくなり、黒魔法のみを使うようになる。彼らは職業変更ジョブチェンジ扱いになり、職業名は『ダークナイト(闇騎士)』と呼ばれ、あまりいい目で見られることは無い。

 プレイヤーは『パラディン』9割、『ダークナイト』1割の割合で配分され、職業変更ジョブチェンジするまではどちらなのか、本人にすら分からない。


 職業名:『サモナー』

 内容:別名召喚士。自ら戦闘に参加するのではなく、モンスターなどを召喚して戦わせるジョブ。戦いが苦手な人にオススメだが、低レベル時の団体行動はかなり危険。

 ジョブランクというものがついており、低ランク時には弱いモンスターしか召喚できない。ランクが上がれば上がるほど、強い対象を召喚することが出来るようになるため、初期から召喚を使っていくことをおすすめする。



「なかなかいいのが沢山あるな……」

 この中からひとつと言われても、かなり悩んでしまう。『ヴァンパイア』なんて太陽光の弊害がないというのなら、ほぼ最強のように感じてしまうし、『ネクロマンサー』もどこかかっこいい……。

「なかなか決まらないのであれば、少し変更しましょうか?」

 首を捻り悩む俺たちに、天造さんはストレージから四角いキューブのようなものを取り出して見せた。


「開発者権限、『設定変更セッティング・チェンジ』――――――――――――」


 彼女が何かをキューブに向かって囁いた直後、辺りは光に包まれた。

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