第2話

すーっ。すーっ。

凛花が死にかけて明日で1週間。まだ目を覚まさない。

「凛花。凛花。あなたを刺した女は逮捕されたわよ。同じクラスの船原さんだったの。知ってる人を殺してみたかった、楽しそうな同級生が羨ましかったって。そんな理由であなたが刺されるなんて…。ねえ凛花…いつものように笑って…?」

「と…も……き…」

「凛花!凛花!?先生を呼んでくるわ!まってて!」

意識はハッキリしていないが反応はあった。

「回復の兆しが見えます。もう少し待ちましょう。大丈夫ですよ。反応があったんですから。今日はゆっくり寝てくださいね。お母さんも凛花さんも。」

その頃眠っていた凛花にも周りの声は、はっきりと聞こえていた。母が心配する声も、父が駆けつけてきて母を支えていた声も、医者の声も全て。言葉を発することも視覚で確認することもできなかったが状況はわかっていた。そして疑問、凛花の前に刺された男の人…、誰か思い出せていなかった。凛花だけじゃなかったことだけはっきり覚えていた。それが凛花にとってたしかに大切な人だったことも。

翌日。日が昇り看護師がおはようございます、とカーテンを開けたそこには目を覚まし、少しベッドを起こした凛花がいた。側からは凛花はぼーっとしているようにしか見えなかったがずっとわからない、誰だった?わからない、と、ちいさな声で繰り返していた。

「凛花さん、気がついた?ここがどこだかわかるかしら?」

「…。はい…。病院、ですよね、私刺された…。」

「ええ、そうよ。いま、先生呼んでくるから、少し待っててね。」

「待って、看護師さん。私が病院に来た時もう1人いたと思うんだけど無事かしら…。」

「変ね。凛花さんが病院に来た日、他に運ばれた人はいないわ。お母様のお話では被害にあったのはあなただけだって。」

「え…。そう…。そんなはずないのだけど…。ありがとうございます。」

「じゃあ、先生呼んできますね。」

凛花は納得がいかなかった。確かに私の前に誰かが刺された。それははっきりしていた。

「凛花さん、おはよう。君の主治医の山原です。よく目を覚ましてくれたね。ここに来た時は瀕死だったのによく回復したよ。看護師の話によると少し記憶障害かなにか少しあるみたいだけどそれはまた精密検査してみようかな。他にどこか気分の悪いところ、気になるところはないかい?」

「はい、大丈夫です。」

記憶障害?そんなはずは無い。と思いつつ後日精密検査を受けたが、やはり異常はなかった。

「うむ…そのうちはっきりしてくると思うが。あまりに気になるようだったらまた伝えてくれるかね。」

その夜凛花は夢を見た。とても不思議な夢。全面が白い壁の部屋にぽつんと1人。どこかからか声が聞こえた。

「君の大切な、君を大切に思う男の子は君を現世に残すことを選んだよ。しっかり生きてね。それと彼には伝えるの忘れちゃったけど彼のこと、君の世界じゃ存在しなかったことになる。思い出せるといいね。」

ただそれだけの夢だった。

凛花はその後も幾度か夢を見る。顔のはっきりしない男の子と見たことの無い風景。そしてぼんやりと声が聞こえる。

「君が思い出せたらこの子と話せるようになるよ。」

~おわり~

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君が消えた後 動かされている点P @pointP

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