第2話 ふみが鳴くんは

 にゃー。


 にゃー。




 また、ふみが鳴いとる。

 今日は玄関や。


「何や、どないした?」


 わしが行ったら、土間から上がってきよった。




 ふみは、外に向かってよう鳴く。


 理由は、わかってんねや。

 お母ちゃんを探しとんねん。

 お母ちゃんが恋しいねん。


 せやけど、うち上がる前、どう考えても数日間ふみは外でひとりやったし、鳴いても鳴いても母親がぇへんかったっちゅうんは、やっぱりはぐれたか、それか捨てられたとしか思われへんがな。




「なあ、ふみ」




 もう、お母ちゃんには会われへんねや。


 外に出たってお前ひとりで生きてけそうもないやないか。

 ええやんけ、わしが面倒みたるさけ。

 動物病院でもろてきた粉ミルクもあるし、缶詰めもある。さっき食べたん、おいしかったやんな。

 眠たなったら、どこでも好きに寝たらええ。いやまあ、座椅子以外でな。座椅子はわしの定位置やさけ。

 トイレはシステムトイレやで。何がシステムか知らんけど。何かええんやろ。ふみ、すぐ覚えてちゃんと出来でけとるしな。


 うちにも慣れてきたんとちゃうか?











 にゃー。




 しばらくして、またふみが鳴きよった。


 切なぁなりかけて……




 わし、首ひねった。




「……お前、お母ちゃん、どこにいる思てんねん」


 ふみは、階段の下に座って、二階に向かって鳴いとった。




 二階、もう好きにウロチョロしてるやんけ。

 何もおらんの知ってるやんけ。




 いや、もしかして……


 まさか、今まで鳴いてたんも、お母ちゃんを呼んでたんやなかったんか……?




 にゃー。




 頼むわ。今、何言うたか教えてくれや、ふみ。

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