先輩

ヒガシカド

先輩

「花をあげよう。他の人には内緒だよ」

 彼はそう言って、いつの日からか私に花を毎日一本ずつくれるようになった。


 彼は日ごとに様々な種類の花を私によこした。ある時は白、またある時は黄色、そのまた次は…いつしか私は、先輩のくれる花が楽しみになっていた。

 彼が私をどう思っているか、それはどうでも良かった。ただ花と先輩と私が存在する、その状態が尊く不可侵なものだと思っていた。


 最後に彼がくれた花は、薔薇だった。


「毎日くれるもんだから、物凄い量になってしまいましたよ。枯れないのを見越していたんですね」

 私は彼の墓前に、花束を置いた。

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先輩 ヒガシカド @nskadomsk

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