貴女はアテネ


 そのような話をしていると、ななしさんが、

「イシュタル様、お話は伺いました。どうぞ私の主になってください」

「そしてお願いがございます。私は名前がありません、名前をくださいませんか?」


 私は少し考えましたが、一つ名前が浮かび上がりました。

「アテネ、貴女はアテネ」

「アテネさん、私を姉と思ってくださいね」


「アテネさんは今お幾つ?」

と聞くと、十六と答えました。


「アテネさん、取りあえず戻らなくてはなりません」

「私がいないと、トールさんが心配するでしょう、ついて来てください」

「あなたは剣奴でしたね、私から贈り物を上げましょう」


 私はとっておきの日本刀の小太刀を授けて、「これで私を護ってください」とお願いしました。

 アテネさん、とても嬉しそうにしました……なにか目的が欲しかったのでしょうね……生き甲斐ですかね。


 イシュタルである私の部屋に、二人で戻りましたら。

 案の定、トール隊長とアポロ執政が私を探しています。

 私を見つけると、物凄く怒りましたが、側にいるアテネさんを見て、トール隊長が唖然としています。


「あの剣奴……こんな少女だったのか!」

 それより殿方たちは鈍い、

「お二人とも、このアテネさんの格好を見て、何とかしようと思わないのですか、ニコルさんはいませんか!」


「ニコルさん、この方はアテネさんといわれます」

「この方に似合う服をお願いできませんか、それとアテネさんも女性ですから、それなりお化粧をしてあげてください」


 しばらくして、すごくドレスアップしたアテネさんをつれて、ニコルさんがやってきました。

 ただニコルさんが、疲れた顔をしています。


「どうしました」と聞くと、

「イシュタル様、あまりにアテネさんが無口なもので、ご希望を一切いわれません。どうして差し上げようかと、考えるのに少々疲れました」

 私は大笑いをしました。


「アテネさん、少しは喋らなくてはいけませんよ、女の子ですから」

「分かりました」と、ぶっきらぼうに云いますので、またニコルさんと笑ってしまいました。


「ニコルさん、ご苦労さまでした、お礼に私と食事でもどうですか?」

「ちょうど、アポロさんにもトールさんにも、話がありますので」


 私が、インスタントカレーを作っていると、二人がやってきましたので、

「殿方も来たことですので、食事でもしましょう」


 この席で正式にアテネさんを紹介した後、

「ジャバ王国もあの動乱から立ち直りつつあります、国政はアポロ執政の手腕で安定しています」

「軍事や治安においても、トール隊長の尽力で何とかなっているようです」


「人々の顔も、明るさを取り戻しつつあります、そろそろ私も世界の見聞に戻り、私のなすべきことをしなければなりません」

「長く女王の椅子に座っていましたが、席を譲ろうかとおもいます、皆様のご意見を伺いたいと存じます」


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