突撃隊


「ニコルさん、ビクトリアさんと小雪さんを、呼んできてくれませんか?」

 二人が来ましたので、ニコルさんとアポロさんには席をはずしてもらいました。


「トール隊長が私に忠誠を誓ってくれます、そこでナイフを授けようと思います」

「過去一度、授けたことがありますが、その時はサリーさんが立ち会ってくれました。ご面倒ですが、立ち会いをお願いします」


 私はピエールさんへ渡したナイフと、同じものをトールさんへ渡し、「私を支えてください」と言います。


 トールさんは両手で捧げるように受け取り、

「トール、この身が朽ち果てるまで忠誠を捧げます」

 と云いました。


「先ほども言いましたが、このナイフを持つ男が、あと一人います、もしその男と出会ったときは、力を貸してやってください」


「名はピエール、元アムリア帝国騎士団総長だった男です。そして、私のもう一つの名はヴィーナスです」

 こう言って、ピエールさんに与えたマルスの紋章を教えたのです。


 その後、突撃隊の面々は、八割ほどが残ってくれました。

 彼らは隊の名称に、私の名前を望んだので許可しました。

 イシュタル突撃隊と名乗るそうです。


 アポロさん、貴方の出番ですよ、これからの知恵を見せてください。


 三日ほどたったころ、アポロさんがやってきて、「準備ができました」と云います。


 アポロさんは、イシュタル突撃隊の武力を背景に、私に味方し反旗を翻すように説得、ジャバ王国の治安権を持つものの、七割を引き入れたのです。


 私が、よく権利を手放なしたものだと感心すると、

「親衛隊は壊滅しております」

「国軍は親衛隊が壊滅と聞くと、兵の逃亡が多発して、最早機能していません」


「現時点で、イシュタル突撃隊の武力は、この国では群を抜いた状態です。またイシュタル様の風評が、それに拍車を掛けています」


 私の風評ね……


「そして利も撒きました、海外貿易の独占権です。この利益は二割を税として徴収します」


「一つ我儘を聞いてもらえませんか、アムリア北西にキールという町があります」

「この町に私の仮の館があります、この町との独占貿易権を私にくれませんか、そして私の名代として、ニコルさんを任命したいのですが」

 勿論、許可してもらいました。


 さて集まった方々は、欲の皮の突っ張った方たちです。

 アポロさんの手腕を、見せていただきましょう。


「イシュタル様の下に、集まった方々に申し上げる、今後の方針と今のジャバ国王の待遇について、ご意見をお聞きしたい」


 国王を退位させるのは、あっさりと決まりました。

 しかし方法で意見が割れましたね、煎じ詰めれば、みんな引導を渡すのは、嫌だということです。


 私は考えました、この人たちの前で、私の冷酷さを見せねば、これはまとまらない。

 恐怖で国を締め上げるのは、翻意ではないが、いたしかたない。

「国王の処分は後で決めましょう」


「トール隊長、ビクトリアとともに、ここに来ない者の所へ行き、恭順するようにいいなさい」

「一回でよろしい、恭順しなければビクトリアに、私の死神をだして処分してもらいなさい」


「ここにいる方々にも、一緒にいってもらいましょう」

「突撃隊が、皆様の安全を守るはずです」

「全てを一巡したらすぐに戻ってきなさい、恭順しないものは、いないはずです」


 アポロさんに、何人来ないのですかと聞くと、三人とのこと。

 この国は小さい島国ですので、そんなものですか、では五日で済むでしょう。

「五日後に、もう一度ご足労ですが、集まってください」


 四日後、ビクトリアさんが戻ってきました。

 最初の一人だけは、死神を使ったそうで、見ていた者は震え上がったと聞きました。

 あとの二人は、一緒にいった者が懸命に説得したそうです。


 五日後に、私はイシュタル突撃隊に、出陣を命じました。


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