助命


 親衛隊は壊滅し、あっという間に戦いは終わりです。

 簡単ですね、私たちはもう人ではないと、確信するばかりです。


 さてトール隊長に会いましょうか?

 見に行きますと重症ですね。

 アポロさんが突撃隊の助命を進言したので、なにか含みがあるのでしょう。

 それに私はこの人は嫌いになれません、助けてあげましょう。


 肉体臓器の再構成をイメージして、治療を始めました。

 これはすこし疲れるのですよ。

 看病はニコルさんにまかせましょう。


 私たちがお茶をしていると、アポロさんがトール隊長をつれてきました。

 昔からの知り合いだそうです。


 ニコルさんに会って、アポロさんにも説明されて、私から直接、真意を聞きたいそうです。

 見るからにこの人は、武人と呼べそうな人です、どこかピエールさんに似ています。


 まあ、あの至高王とはタイプが違いますが。

 あれ、何でこんなところで、至高王の名前がでるのでしょう……


「トール隊長、お話があるとのことですが、聞きましょう」

「イシュタル様は何ゆえ、今回のことを始められたのですか?」


 私はニコルさんの一件を語り、静かに怒ったことを語りました。

 治安権などの国家の権力を売り飛ばして、国を成立させている制度と、それを放置している、無能な君主を何とかしようと思ったことも。


 その後は、この国の人々が決めることで、再びこの制度が復活するなら、それまでと思っていること、などを話しました。


「最終的には、この国の人々が決めることです」

「しかし、現状では決める前にチャンスもないでしょう、だからチャンスをあげようと思ったのです」

「私個人は奴隷制度が嫌いです、でもそれはこの国の問題でしょう」


「わかりました、イシュタル様に従います」

「ニコルさんとアポロさんに聞いたでしょうが、私は怖い女ですよ、かまいませんか?」

「できましたら、イシュタル様に忠誠を捧げたいと思います」


「その前に、幾つか聞きたいことがあります、なぜ親衛隊にいたのですか」


「突撃隊とは、親衛隊の中でも、ごくつぶしといわれる連中を集めた部門で、いわゆる弾よけです」

「私は王に嫌われ、この部門の隊長を命ぜられました」


「王に治世のことで諫言したためです」

「ニコルの兄はそのため暗殺されたようで、アポロはそのことを警告してくれていたのですが……」


「王はどんな人物ですか」と聞くと、「いいたくない」と云います。


 なるほどと思いましたが、話題を変えて、「突撃隊としては、どう行動しますか?」


「私についてくる者は、イシュタル様に仕えさせてください、それ以外は、各自の好きにさせてくださいませんか?」

「いつか同僚と、刃を交わすことになるかもしれませんが、大丈夫ですか?」

「覚悟しております」


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