親衛隊壊滅


 ビクトリアさんが、

「あるじ殿はどうするお考えですか?」と聞きます。

「取りあえず親衛隊を壊滅して差し上げ、ジャバ国王と会見いたしましょう」


「もし無能なら首をはねます、あとはこの国の国民にゆだねましょう」

「だめなら、至高王あたりに来てもらえばいい話です」

「ビクトリアさん、傭兵としての力を貸してください」


 私はニコルさんに、殺された兄の親友という方を、連れて来てもらいました。

 見れば三十を少し過ぎた男で、細い目をしています。

 私は「どうぞ、おかけください」と席を勧めました。

 男は黙って座りました、私はじっと品定めをしています。


 それにしても肝の据わった男です。

 まだ死体がゴロゴロしている中を、平然と通り越して、怯えるでもなく座っている男。


「私は聞く耳をもっています、貴方は語る口をもっていますか?」

 男はしばし沈黙の後、「私は風諫ふうかんを時々いたします」

 古風な言い回しです、風諫ね、古代中国の賢者ですか?


「私も例え話は大好きです、なにせ女ですからね」

「私のたとえ話は、昔、神様がおられました、神様は難しい問題が大好きで、よく人に問題をだしました」


「ある腐った国の、対処方法についてという問題で、だれ一人、解けたものはありません」

「そこで神様は実力行使にでます、そして再び問題をだしたという話です」


「とくに占いは好きです、占いって帝王学ですよね」

「貴方は易者さんですね、私と貴方を占ってください、報酬も考えますよ」


「わかりました、では正直にお話いたしましょう」

「このままでは凶です、親衛隊をどうにかできなければ、大凶です」


「親衛隊を壊滅させれば、よいのですか?」

「できれば先頭の突撃隊を残していただき、残りを殲滅できれば、問題は解けると思います」


「貴方、お名前は?」

「アポロです」


 アポロさんから、あと二日ぐらいで、親衛隊がここへやってくると教えていただき、その間に一旦、小雪さんには戻ってもらいました。

 何といっても滞在限度は三日ですから、勿論特別ですがすぐに戻ってもらいます。


 ビクトリアさんはやる気満々です。

「あるじ殿、やはり本質は男なのだと実感した、私がだ」


 二日後、親衛隊がやってきました。

 黒い甲冑の騎士たちで、髑髏の旗がたなびいています。

「謀反人共、もはや降伏はゆるされん、死あるのみ」

「我は親衛隊の先鋒、突撃隊のトールである、死の餞を贈ろう、我と戦うものはいでよ!」


 小雪さんが出ようとすると、ビクトリアさんが、

「まかせてくれないか、こんな舞台に立ちたかったんだ」と云っています。

「大丈夫ですか?」

「あるじ殿のため、まだ死ねないので大丈夫だ」


「我はイシュタル様が従者の一人、ビクトリア、お相手いたそう」

 その名を聞いて、親衛隊が少し動揺しています。


「大陸に名高い傭兵ビクトリア殿か、これは名誉なことだ、では、馬上からは失礼というもの」

 相手は馬をおりて、「ではまいる」といって剣を振りかざした。


 一時間ほどたちましたが、まだ二人は戦っています。

 不安になって、小雪さんに聞きますと、

「大丈夫です、ビクトリアが勝つでしょう」といいます。

 ビクトリアさんの剣が、相手のわき腹に突き刺さりました。


 あれ?

 致命傷を避けましたね、ビクトリアさん、余裕です、安心しました。


 突撃隊が突っかかってきます。

 貴方たちは助けてあげましょう、私が電撃杖で気絶させておきました。


 突撃隊が壊滅したのをみて、残りの親衛隊が突進してきます。


 小雪さんが何か唱えますと、地面が盛り上がり、ゴーレムが何体も沸きいでてきます、勿論、槍も効きません。

 親衛隊の中に魔法士がいるようで、ゴーレムが破壊されますが、小雪さんがすぐに復元させています。


 まれに私のところにまできますが、電撃で終わりです。

 あっさりと親衛隊は壊滅しました。

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