小雪さん、出番ですよ


「ニコルさん、だれか信用できる人を知っていますか?」

 ニコルさんの殺された、兄の親友という人が町にいるらしい。


 王政に反対していた兄を、それとなく庇ったそうで、兄にいつも「身を慎め」と、忠告してくれていた人らしい。

 頼りないかもしれないが、いないよりはマシか。


 それだけ聞いておくと、小雪さんに、「出番ですよ」と声を掛けました。


 ニコルさんに、その治安権を購入して好き勝手をしている、男のところへ案内させました。

 町の中心に住んでいましたが、町へ入ったとたん、絡んで来る者ばかりです。


 「露払いをいたします」

 小雪さんが抜刀して前に出ると、途端に血煙が上ります。

 一瞬で、絡んできた男を切り捨てたのです。

 私みたいにぐだぐだとは考えません、すばらしく鋭利な刃物を見るようです。


 ビクトリアさんが、「さすがは師匠」と、云っていますが、いつから弟子になったのでしょう。


 小雪さんが叫びました。

「イシュタル様の御前を遮る者は、この小雪が許さぬ!」

「死にたいものは、かかってまいれ!」


 二三本矢が飛んできましたが、私の電撃で打ち落としてくれます。

 大事な小雪さんには、傷一つつけさせはしません。


 これで、町は物音一つしなくなりました。

 小雪さんが「ではイシュタル様、参りましょう」と促します。


 私は、この町を支配する者の館につくと、無言でドアをぶち破りました。

 小雪さんに「お願いします」というと、小雪さんが血刀を持って館に入ります。


 私も続いて入りましたが、小雪さんが死神をだしていて、すでに一階は死体が半分溶けた状態で転がっています。


 二階に上がると、小雪さんがある部屋の前に佇んでいます。

 周りには一刀のもとに、切り捨てられた死体が山積みの状態、中には女性や、まだ少年のような男も混じっています。


 小雪さんが、

「歯向かうものは全て切り捨てました、あとはこの部屋だけです」

 すこし小雪さんが恐ろしく思えました。


 小雪さんがビクトリアさんに目配せしますと、ビクトリアさんが剣を構え、小雪さんがドアを開けた瞬間に飛び込みます。

 剣戟の音がすぐしなくなり、私は部屋へ入りました。


「この男が治安権の持ち主か?」

 ニコルさんが頷くので、その男を見ました。


「我が名はイシュタル、汝は死が望みか?死にたくなければ親衛隊を呼べ」

「どうする?」


 男は黙っています……

「では死ね」と死神を呼び寄せると、真っ青な顔をして、「狼煙がある」と云いました。


「狼煙を上げよ」と言うと、親衛隊に殺されると怯えますが、「今、死にたいか?」と強要しました。


「助けてくれるのだろう?」と男が聞きますので、「チャンスぐらいは」と答え、私は男を連れてバルコニーにたちました。


「私はイシュタル、今この町は私の名の元にある、私は寛大である、前任者の処罰はしない」

「また、どのようなことを前任者にしようと処罰はしない」


「いまより前任者は館を出て、町を出て行く、その間は好きにするがよい」

「さあ、町を出て行くがよい、それから私からの贈り物だ」

 と言って、片足の関節をはずしてやりました。


 ニコルさんの一件を見ているので、結果は想像つきますが……


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