治安権売買


 ニコルさんの服はボロボロですので、とりあえず下着と服も出しましたが、三日しか持たないのは問題ですね。

 ニコルさんはナース服を着ていますが、これは私の趣味です。


「よろしい、食事はいつとりましたか?」

 と聞くと、昨日からなにも食べてないということです。

 とりあえず四人分の、パン缶と缶ジュースを取り出しました。


 さてお食事をしましょう。

 ニコルさんはなにもいわずに食事をしています。

 色々聞きたいこともあるのでしょが、私が口を開くまで待っているようです。

 が、我慢しきれずに、

「イシュタル様、私をどうなさるおつもりですか?」


「ニコルさん、死を覚悟した貴女が、明日を気にするのですか?」


「私はこの国を見学しに来ました、その途中で貴女に出会ったのです。私も女ですので、腹がたってあのような結果になり、貴女と縁を持ってしまいました」


「経緯はご存じのとおりですね、問題は今後です、助けた以上、貴女を何とかする責任が私にはあります」

「生きるも死ぬもです、しかも貴女の口を封じなければならない、で考えた結果、貴女を私の配下とします。奴隷ではありませんよ」


「強制はしません、もし望まないなら記憶は消しますが、私と会った場所に、戻して差し上げましょう」


 ニコルさんは、

「私は戻る場所がありません。お願いします、どうぞ私をご自由に」


 さて、これからどうしましょう。


「ニコルさん、このようなことは頻繁にあるのですか?」

「ジャバ王国では珍しくありません、ご存知の通り、女が多いので、貧しい家では娘を売ります」

「私みたいに保護者がいなくなると、攫われたり殺されたりします、だれも助けてはくれません」


「先ほどの男たちは、私を売り飛ばし、お金に換えようと兄を殺したのです」

「お金さえ積めば、人殺しは簡単に雇えます。だれかれ頼まないのは、料金が法外に高いからです」


「治安機関はどうなっているのですか?」

「彼らが治安機関なのです」


「国は一年限定の、治安権を売りに出しています」

「購入すると、その指定地域の一切を思うがままです、一年たつと、また購入するのです」


「購入代金を捻出するために何でもします、他の者が購入すると、今度は自分の命が危うくなりますので、彼らは何でもするのです」


「治安権の代金を払わずに、居座ったらどうなります」

「王の親衛隊がやってきて、その者の関係者、一族まで残酷に殺されます」


「小雪さん、もうしばらく大丈夫ですか、お願いしたいことがありますが?」

「なんなりとお言いつけください」


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