ニコル


「申し上げます!」

 と、先ほどの半裸の女性が、私の前に畏まっています。


「私はこの近くの村に住む者です」

「この者たちは兄を殺し私を嬲り、そして売ろうとしました」

「私はもう失うものはありません」

「せめて先にいった兄の恨みを晴らしたく、とどめを刺させてください!」


「一つ聞きます、恨みを晴らした後、どうしますか?」

「もう私は生きるすべがありません、死ぬか売られるかどちらかです」

「私は何とか恨みを晴らしたら、死ぬつもりでした」


 ビクトリアさんの意見を、聞いてみることにしました。

「どう思いますか」

「望み通りにさせてやるべきです」

 小雪さんを見ると頷きます。


 私は考えました、このまま恨みを晴らさせても、この人の明日はない、どうにかしないと。


「処分は貴女にまかせます、しかしその代償として貴女をもらい受けます、よろしいですか?」

「分かりました、どのみち私に生きる道はありません」

「望みが果たせましたら、どうぞご自由に」


 私は死神を戻しました。


「かかりなさい」

 女は動けない男たちを次々と殺戮していきます。


 男たちの悲鳴が聞こえなくなって、しばらくしてから先程の女性がやってきました。

「ありがとうございました、もう思い残すことはありません、どうぞご自由に」


 私は黙って電撃杖を高く掲げ、稲妻を死体の上に落として炭にすると、突風を起こし目障りな物を消し去りました。


 目の前で畏まっている女性は、それなりに美しい人です。

 当然でしょうね、男どもが兄を殺してまで、かっさらおうとしたのですから。


「私は数々の名を持っていますが、ここではイシュタルと名乗りましょう、死の女王とも呼ばれています」

「死の女王としての私が命じます、貴女に死の自由はありません、死の安らぎはゆるしません」


「貴女、お名前は?」

「ニコルと申します」


「ではニコルさん、どこか休憩できる場所はありますか?」

「すぐそこに、村の作業所だった所があります」

「村の者しか知らない場所です、この時期はだれも使用しません」

「では案内をお願いします」


 ニコルさんの案内で、私たちは村の作業所という場所へ着きました。

 なるほど、だれも来ないでしょうね、隠れ場所にはうってつけの場所です。

 とりあえずお茶にしましょうね。


 作業所だったので、椅子とテーブルが幾つかありました。

 そこに座り、ニコルさんも座らせました。


「貴女をもらい受けましたが、それで間違いありませんか?」

「間違いございません、イシュタル様」


 良く見れば、ニコルさんはかなり傷を負っていますので、治療してあげました。


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