第十章 死の女王

小雪の志願


 王位継承トーナメントも終わり、私たちは宿を引き払って、だれもいないところへ行こうとしています。

 深い森に分け入って、周りを確認して、ドアを開きました。


 私には見慣れた前室です。

「ダフネさん、覚悟はいいですか?」

 ダフネさんが頷くので、淡々と登録をさせていただきました。


 ただダフネさんの希望と違って、サリーさんが立ち会ったので、責任の放棄と非難されましたが、そんな約束はしましたかしら……

 私は嘘つきなのですよ。


 やっとリリータウンへ戻ってきました。

 アリスさんが出迎えに来てくれます。

「お姉さま、お帰りなさいませ!」


 ダフネさんは、リリータウンに少々驚いています。

 まずパスポートキー所持者に支給される衣服、最低限の食料などの物品、居住の場所などを、サリーさんが説明をしています。

 マリーさんの一件で、仲良くなってくれたので好ましい限りです。


 すぐに適応する特技をお持ちのようで、早速に支給された服を着ています。

 ピンクのナース服をチョイスしたようです、よく似合いますね。


 ダフネさんの希望で、武器としてナイフを支給しました。

 『グリーンベレー/コンバットナイフ』と呼ばれるもので、ピエールさんご夫妻に渡したものです。

 『よりしろ』効果でなんでも切れそうですよ。


 ダフネさんが、ナイフさばきを披露してくれました。

 お綺麗な顔をして、とても危ない女と、再度認識しました。


 私は百円電卓を弾きながら、お小遣い帳をつけています。

 特にフィン連合王国で、湯水のごとく使いましたので、しばらくは一番安いもので、食いつなぎましょう。


 私の権力で経費にしましょうか?でもアリスさんが怖いです、この手のことは容赦がありませんからね。

 特に私とビクトリアさんは、叱られてばっかりです。

 さてダフネさんはどうでしょうか。


 とにかく、リリータウンの私の居室だけが、私のプライベートルーム、ゆっくりとくつろげる空間です。

 ドアに安眠中の札をかけて、まずは寝るとしましょう。

 そうそう、鍵を掛けときましょう、いつ不埒な女が入ってくるか分かりません。

 特にアリスさんなどは要注意です。


 軽く寝たでしょうか、私はドアをノックする音で目を覚ましました。

 返事をすると、小雪さんの声で、

「マスター、おりいってお話があります。つきましては、食堂までお越し願えませんか?」

 小雪さん、なんのお話でしょう。


 食堂へ行くと皆がいます。

 何か私の寝ている間に、会議をしていたみたいです。


「次のマスターの旅には、私が同行をすることを、ご承認願いします」

 と小雪さんが、口を開きました。


「マスターはこの大陸の、主要国は見聞されました」

「あとはジャバ王国となりますが、ここの治安はアムリア帝国などとは、比べ物にならないほど悪いのです」

「しかも奴隷貿易で成り立っている国です」

「人心も荒れ果てていて、盗賊しかいないと考えて、よろしいかと思います」


「マスターは私たちから見ても、どうしようもないほどお綺麗です」

「女神と呼ばれても、だれも否定できないでしょう」

「その様な方が、こんな国を旅するなんて、本当は薦めたくないのです」


「お一人でも、何ほどのこともないでしょうが、もしマスターが我を忘れた場合は問題です」

「マスターの知識なら、熱核兵器やCB兵器を、正確にイメージし、実行することはたやすいはず」


「まだそこで止まれば、ジャバ王国の壊滅ぐらいで済みますが、もし『破滅』をイメージしたらどうされます?」

「この星ぐらい、簡単に消えてなくなりますよ」


「熱核兵器やCB兵器というのはなんだ?」

 ビクトリアさんが、小雪さんに聞いています。


「詳しい説明は省きますが、マスターの世界の兵器で、『熱核』とは、それ一発で大都市が地獄の業火につつまれ、その後、その土地に人が住めなくなります」


「『CB』とは一旦使用されると、治療のできない病気がその地域に発生し、人々が死に絶えます」


 そのように云われると、言葉もありません。

 しみじみ、私は人ではなくなっているのを実感します。


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