王位継承トーナメント記念舞踏会


 そういわれては、サリーさんもやはり女の人です。

 だんだん嬉しそうな顔になってきました。

「でも、私はもと娼婦……」


 ダフネさんが、

「心配はいりません、私がついていますし、サリーさんがドレス姿になれば、それは美しいことを確約します。それに巫女様のドレスアップ姿も、見てみたいと思いませんか?」

 と云います。


「お嬢様のドレスアップ姿……」

「それはぜひに、見てみたいですわ」


 私たちはやはり女です。

 だんだんハイテンションになってきました。

 髪をセットし、ドレスをああでもない、こうでもないと楽しみながら選び、姿見で何回もチェックをして、万全の準備をととのえ、馬車に乗りこみ、さあ出陣です。


 それにしても、サリーさんもダフネさんも、髪を結いあげてお綺麗なこと。

 こんな綺麗な人が、私の夜のお友達なんて……胸がドキドキします。

 こんな二人に秋波を送られたら、男なんて一発でしょう。


 さて、馬車が会場につきました。

 私たちが入っていくと、一瞬シーンとしました。

 案内状を差し出すと、席へ案内してくれますので、隅のほうをお願いしました。


 お二人さん、楽しんでください。

 私はダフネさんに耳打ちをしました、「サリーさんをお願いします」と。


 見事なシャンデリアの下、カクテルグラスを手に持ち、佇む二人は会場を圧倒する美しさです。

 殿方が囲む囲む、殿方以外にもご婦人方が、これまた親衛隊状態です。


 確かにオーラが見えますね。

 

 楽団が音楽を鳴らし始めました、アップテンポの私の知らない曲です。

 会場の中央あたりで、ダンスが始まります。

 次々と曲が流れ、紳士淑女が踊っています。


 あれ、サリーさんとダフネさんが、手をとりあって踊っています。

 どうやら女同士のダンスは、マナー違反ではないようです。

 だんだん二人以外の人が、踊りをやめ出して、二人の踊りを見ています。


 確かに見惚れるほどです、綺麗ですね。

 踊りが終わって、食事になりました。

 色々とテーブルに持ってきてくれるようですね。


 ところで、いくら隅の席といえども、私の周りにはだれもいません。

 私は一人でテーブルに座っていますが、このテーブルにはだれも来ません。

 何か視線だけは、やたらと感じるのですが。


 ボーイさんが、料理とカクテルをもって来ます、私は一人で黙々と食事をしています。

 サリーさんが、上気した顔をして戻って来ました。


「お嬢様、寂しそうですね」

「そうですね、どの方にも声も掛けていただけないなんて、少しショックです」

「でも、サリーさんとダフネさんの楽しそうな姿を見ていると、私も楽しくなります」


「ところでダフネさんは?」と聞きますと、

「古い知り合いの女性と出会われて、少し喋っておられます」


「確かにお喋りは、私たち女性の楽しみの一つ、それはよかったですね」

 と答えましたが、元大賢者の古い知り合いなら、少し警戒が必要かもしれません。


 ところでサリーさんは楽しそうです、私は本当によかったと思いました。


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