楽しく笑える事


 お嬢様……巫女様……


 私が目をさますと、二人が私の側で、添い寝をしています。

 軽く寝たので、少し元気が出ました。


 二人を見つめながら、私はこの世界に来てからのことを思います。

 そういえば、サリーさんのドレス姿を見たことがありません。

 たしか二十二歳だったはず、私に関係したばかりに、毎日毎日、私のために尽くしてくれています。

 多少、夜は大変ですが……


 ダフネさんも出会ってから、私の側でなにかと尽くしてくれています。

 この方も、多少夜はしんどいですが、こうして私のことを心配して、添い寝までしてくれる人はいないでしょう。


 お二人とも私よりも年上なのに、年下の私のために……いくら所持者としても……なにか報いたいですね。

 なにか楽しく笑えることを考えましょう。


 私はそっと起きだして、宿屋のカウンターで、どこかで楽しい、女でも安全なパーティーはありませんか?

 と尋ねました。


 宿屋が云うには、王位継承トーナメントを記念して、今夜舞踏会があるそうです。

 出席者は厳選されるそうで、この宿屋からも、少数の方だけ案内しているとのことでした。


 スイートルームの私たちが望むのなら、招待状を用意するといってくれました。

 食事もおいしいし、出し物も品のいい踊りなどですので、踊らなくても楽しめますよ、と勧めてくれます。


 殿方は大丈夫ですか?と聞きますと、この舞踏会で無作法をすると、たとえ貴族といえども、以後社交界に出入り禁止になります。

 いくらこの国が尚武の気質としても、ここで面目を失うわけにはいきませんので、色恋沙汰はご法度になっています。

 お嬢様がたが、未来のご主人をさがされるなら、お勧めはしません。


 そのような説明がありました。


 私は三人分を申し込みました。

 ドレスなどは、どこにいけば間に合うかと聞きますと、宿屋自身が隣で直営しているとのことでした。


 舞踏会の時間に間に合うかと、さらに聞くと、靴や髪飾りなど一式、既製品でよければ、そしてすぐに来ていただければ、間に合わせるとのことでした。


 私は部屋に戻り、

「サリーさん、ダフネさん、起きてください!」

 と二人を起こして、

「さあ、いきますよ、舞踏会の準備です」

 と言いました。


 サリーさんもダフネさんも、一瞬の沈黙の後、「舞踏会ですか!」と声をそろえましたが、ダフネさんがさらに「王位継承トーナメント記念舞踏会ですか?」と聞きます。


「そうらしいです」と答えますと、とても嬉しそうにして、

「サリーさん、滅多に出れない舞踏会です、こんな機会をのがしてはなりません」


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