娘を私に売りなさい!


 ごった返している町の中、宿屋に向かっていますと、ダフネさんが急に走っていきました。

 見ると物凄い剣幕で、ガラの悪そうな男に食って掛かっています。

 何かあってはまずいので、サリーさんに荷物の番をしてもらい、私も走っていきました。


 ダフネさんが、

「この娘に何をしているのですか!」

「俺が買ったんだ、殴ろうが、売女にしようが、何をしようと俺の勝手だ!」

 足元に倒れている娘がいました。


 見れば手錠をされ、十五歳位だろうか、ボロボロの服を着て、悲しそうな顔をしています。

 痛々しいほどやつれていて、涙が出ました。


 多分、男にぶたれていたのでしょう。

 頬が腫れて、唇からは血が流れています。


 ダフネさんが、

「貴方が買ったといいましたね、では売買証明書をお持ちでしょうね」

 男は、

「あんたに見せるものじゃないが、見せてやるさ、これで文句はあるまい」

 と、何かの紙を見せました。


 ダフネさんはそれを見て、

「この価格の倍を払いましょう、その娘を私に売りなさい」

 男が、「嫌だね、本当は売ってもよかったが、こうなりゃ意地だ、死んでも売らない」


 ダフネさんが何かを云う前に、

「では私に売ってください、私は鞭が趣味、人を鞭で打ちのめして楽しんでみたいと思い、死んでも構わない奴隷を探していました、私に売りませんか?」

 私は小さいカバンから、金貨を一握り取り出し、男の前につきだしました。

 「これでどうかしら?」


 男は私の差し出す金貨を見て、

「売ってやるが本物か?」

「ご自分の目で確かめることね」

 男は分かったと云って、売買証明書を差し出しました。


 私と男は同時に相手の物を取り上げ、これで商談成立です。

 私は、「これでその娘は私のものです」と宣言し、男に向かって、

「もう用はないでしょう、それとも死にますか」

 と電撃杖のスイッチを入れ、放電を起こしました。


 男は青い顔になって、「あんたのもんだ」といい、立ち去って行きました。

 このまま電撃を食らわしましょうか。


「突然走って行ったので、何事かと思いましたよ」

「申し訳ありません、この娘があんまりぶたれていて、思わず逆上してしまい……」

 ダフネさん、いい人ですね。


「とりあえず、サリーさんの所へ戻りましょう、ダフネさん、その娘さんをお願いね」

 その娘さんは、私を見て震えあがっていますので。


 ダフネさんが、

「大丈夫ですよ、この方はお優しい方ですよ、あれは貴女を助けるための嘘ですよ」

 と云ってくれます。


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