フィン連合王国の都


 あれから私たちは、ダフネさんの案内で、フィン連合王国の都、ロンディウムを目指しています。

 至高王の、王位継承トーナメントを見に行くためです。


 この国は八つの王国が連合する連合王国で、至高王(ハイキング)が統治する決まり、その至高王を決めるトーナメントだそうです。

 結構、公平なのですね、


 15年に一回、各王国の王が推薦する、王族の一人が命がけの決闘を公開で行い、そのトーナメントの最後の勝ち残りを推薦した王を至高王として、服従する決まりになっているようです。


 このトーナメントには、魔法の使用は認められていないそうで、古代に作られた魔法封印フィールドで行われます。

 出場すれば、必ず相手を殺すことが要求されます、推薦は棄権することもできます。


 もし決勝戦に共倒れで、二人とも出われない場合、王または後継者が出場することになっているそうで、女王は認められないことになっています、とダフネさんに教えてもらいました。


 激しいですね、これでは死人の山じゃないですか。

「でも巫女様、内乱よりましでしょう?」

 確かにその通りではあります。

 どうやらこの国は、尚武が尊ばれるようですね、短気な君主で無いことを祈りましょう。


 私たちはロンディウム行きの、乗合馬車が出る町まで歩き、やっと馬車に乗ることができました。

 馬車は満員です。

 皆さん、王位継承トーナメントを見に行くのでしょう。


 商人や女子供も皆乗り込んで、口々にトーナメントの話をしています。

 馬車を追い抜くように、騎乗の騎士が数騎走っていきます。

 ロンディウムに近づくほど、街道は混雑し、宿屋は満員御礼、大変な騒動です。


 サリーさんとダフネさんは、まだ気まずい沈黙を守っています。

 私は話題づくりのために、トーナメントの話をふって見ました。


「だれが勝つのでしょうか?」

 サリーさんが口を開きかけたとき、相席のおじさんが、

「それは、ハイドリッヒ王で決まりさ」と喋ります。

 貴方は関係ないの!


「我らが王は強いんだ、お嬢さんたち」

「戦場では、これほど頼もしい男はいない、男の中の男だ、それに女にもてもて、ただいつも食い逃げするけどね」

「お嬢さんたちぐらい綺麗なら、側妃にしてもらえるかもしれんぞ」


「わしは陛下と同じ戦場に立てたことが勲章なんだ」

 なるほど、貴方の王様は勇者だけど、女の敵なのですね!


 散々、女の敵の話を聞かされましたが、やっと馬車が目的地のロンディウムへ着き、私は疲れきった顔をしていたのでしょう。

 サリーさんが「お疲れ様でした」と云ってくれたので、少し落ち着いた気がします。


 ロンディウムの町は、このトーナメントの間はフリーパス、治安も悪化するので各自で注意するように、武器を持つものは携帯するように、と警備の方が怒鳴っています。


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