第九章 お祭り騒ぎの中で

女の戦い


 サリーさんが来ました。

 王都ジャイアールを後にして、私たちがフィン連合王国へ向かう途中、得意の野宿の準備を終わったときでした。


 突然、空間が開き、そこからサリーさんが出てきました。

 その後から小雪さんも、アリスさんまで出てきます。


 私にピッタリとくっついているダフネさんを見て、

「お嬢様、この女はだれですか?」

 サリーさん、早速柳眉が逆立っていますよ。

 後ろで小雪さんが不穏な動きをしています。


 小雪さん、どこから出したのですか!そのナイフは!

 アリスさん、あなたまで、その後ろに隠しているフォークをどうするのですか!


 ダフネさんが、

「私はダフネと申します。できれば皆さまと仲良くしたいと思います、どうぞ、よろしくお願いします」


 小雪さんが、

「マスターの愛人の小雪です」

 小雪さん、その挑発はやめられませんか?

 皆が不穏な動きをしますから。


 サリーさんが、

「お嬢様に、全てを捧げているサリーです」

 ほら、読み通りの展開になってきましたね……


 ビクトリアさんが、

「知っての通り、あるじ殿の夜伽をするビクトリアだ」

 なんですか、その言い方は!


 アリスさんが、

「お姉さまにいじめていただくのが、大好きなアリスです」

 もう言葉もありません。


 ダフネさんが、

「皆さま、なかなかのご挨拶、私も覚悟を決めて、巫女様のお側に侍らしていただきたいと、願っています」


 小雪さんが、

「ダフネさんといいましたか、今の言葉がどのような意味を持つか、理解しているのですか?」


「こう見えても、私は元神聖教大賢者だった者、巫女様に仕えるということが、どういう意味を持つのか、熟知しているつもりです」


「そうですか、神聖教大賢者ですか、ならばその魔法の実力を見せていただきましょう」

 小雪さんが手のひらを差し出します。

 そこには青白い炎が踊っていました。


 するとダフネさんが、

「お受けします」といい、同じように手のひらに差し出すと、今度は赤い炎が踊り始めます。


 二つの炎は捻じれるように絡みだして、互いに相手を締め上げているように見えます。

 しばらく二つの炎は揺れ動いていましたが、ボッと鈍い音がして、赤い炎がけしとんでしまいました。


 ダフネさんは少し汗をかいていますが、小雪さんは平然としています。

 小雪さんは私に向かって、

「確かに神聖教大賢者と認めます、魔力がエラムでの限界を少々超えております、人としては尋常ではありません」


「私はダフネさんが、マスターに愛されるのに意義は唱えません」

「でもお仕えする順はサリーが最初で、ビクトリア、私、あくまでも私の後です、ダフネさんよろしいですね」

「結構です」


 アリスさんが、「私がいない」と騒いでいますが、無視されています。


 サリーさんも自分が一番なので、文句はいいませんでしたが、まだしこりがあるみたいです。

 さて、みんなどうしたのですか?


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