金髪と赤毛の美女


 これにはビクトリアさんも、感心していました。

「なるほど、大きな秘密を隠すために、小さな嘘をばらし、手の内をみせて信用させるわけか」


「あるじ殿、これならどうどうと、あちこち見て歩けますよ、私があるじ殿について歩いても、ホラズム王国はおかしいとは思わないはずです」


「でも、ダフネさんは大丈夫ですか?ビクトリアさんが側にいない場合も発生しますが?」

「巫女様、私の二つ名は魔女ですよ。こうみえても、魔法で私に打ち勝つものなど、この世界では巫女様ぐらいでしょう」

「それと、今のビクトリアも私に勝てるでしょう」


 ビクトリアさんと私は少々驚きました。

 しかし元神聖教大賢者、黒の巫女の側近のことぐらいは知っているでしょう。


「巫女様、私は鍵の所持者のことぐらい知っていますよ、それが巨大な魔力の加護を与えることも」


 ダフネさんはじっと私を見つめている……


「ダフネさん、覚悟はありますか?」


 ダフネさんは、さっきの妖艶な瞳とは違って、決意のこもった瞳で力強く頷きました。


 でも、あのことを教えてあげなくては、あのはずかしい検査のことを……

「ビクトリアさん、検査のことを教えてあげてくださいね」


「お願いします!」


 ビクトリアさんは、ものすごく嫌な顔をしましたが、ダフネさんに丁寧に説明しています。

 ダフネさんなら大丈夫かと思っていましたが、予想に反して、ダフネさんは真っ赤な顔をしていました。


 ビクトリアさんは気の毒そうな顔をしていましたが、ダフネさんはこう云い放ちました。

「巫女様、その時は巫女様が立ち会ってください」

「私の全てを見せます、巫女様の手で検査をお願いします、勿論、その後は責任ですよ!」


 また責任ですか、今度こそ本当に責任を取ることになりますね。

「末永くお側に仕えさせてください」


 ダフネさん、なんか壊れていませんか?

 ビクトリアさん、どんな説明をしたのですか?


 その後、馬車はのどかに揺れて、草原の緑は果てしない。

 うとうとしていたようです。

 馬車が小石を踏んだのか、ガタンとゆれて目を覚ますと、ダフネさんが私にもたれかかり、ビクトリアさんも頬をついた格好で、軽く寝ているようです。


 二人とも本当に美しい、グラマラスで妖艶です、もと男だった私は、鼻血がでそうになります。

 金髪と赤毛の美女に囲まれ、たぶん黒髪の私も絶世の美女のはずでしょう。


 この景色を悪い男が見たら、何が起こるか分からないじゃないですか……

 年若い私に、この二人を守れるのだろうか、ましてこの世界を救うことができるのだろうか?


「守らなくっちゃ」

 思わず口に出てしまいました。


 赤毛の女が、口を開きました。

「守らなくていいさ、あるじ殿を守るのが私の喜びだ」

「それに、折角、無防備にしていたのに、唇ぐらい奪ってもいいじゃないか、なあダフネ」


 金髪の美女も、私の耳元で囁きます。

「私の命に賭け巫女様を守って見せますわ、ビクトリアと違って、私は全てを奪ってくれてもよかったのに」


 これが女同士の会話とは……


 この後、私は侍女服を着るため、ビクトリアさんが小さなカバンより出した、推薦の服を着る羽目に……

 

 二人に散々いじられることになりました。


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