夢見るお家


 あれから、さらに旅を続けています。

 町や村で、私たちは宿屋に泊り、名所を訪ね、お気楽観光旅行を続けています。

 ビクトリアさんは、山賊相手に今日も手当たり次第にのしています。


 いまこの山賊街道一帯では、死の女王とその従者の話題で持ち切りです。

 あの商人たちが、いいふらしたのでしょう。


 一、髪を振り乱した女が、街道に沸き出でてきて、恐怖の贈り物をくれる。


 二、その女は恐ろしい顔をして、腐った亡霊をけしかける。


 三、従者がついているが、血に狂った男で、髪は血に染まり、全身返り血を浴びた悪鬼である、EtcEtc……


 凄いものが、この山賊街道を徘徊しているようです。


 ビクトリアさんに、「血に狂った悪鬼ですか」と言うと、「髪を振り乱した恐ろしい顔の女」とやり返されました。


 だいたい、なんで私の顔が恐ろしいのですか!

 失礼にも程がある、あの商人たち、ただでは済ませませんよ!


「おお怖い、恐ろしい顔の女」と、ビクトリアさんが茶化します。

 キャラが変わっていませんか。


 きゃっきゃいいながら、私たちは山賊街道を進み、目的地の近くで、聞き込みを開始しました。


「あぁ、魔女の家、ダフネさんの家なら、少し行くと街道から分岐する道がある、その道をずっといったら森に突き当たるので、突き当たりにいけば直ぐに分かるよ」


 どこで聞いても、魔女さんはダフネといって、森の中へいけば直ぐに分かると教えてくれます。


 そのダフネさんは超有名人の様で、色々な人が訪ねて来るらしく、私たちが色々聞き回っても、だれもおかしいとは思わないようです。

 評判もすこぶる良くて、褒める人はあっても、けなす人は一人としていません。


 なぜ、魔女と呼ばれているのか?

 聞いてみますと、みんなニヤニヤして応えてくれません。

 一人だけ、直ぐに分かるさ、と云っていました。


 教えられた通り、街道から分岐している細い道を、道なりに行きました。

 緑の森の中を小一時間ほど歩きましたか、道が行き止まりになっていて、すぐに家が分かりました。


 もうこれしかありません、目の前の家はメルヘンチックで、妖精が出てきそうな、童話の世界の中こそふさわしい家でした。


 石造りの外壁で小ぶりな円筒形をしています。

 円錐をした青色の屋根に小さい煙突がポコッと突き出ています。

 ドアは真っ赤に塗られていて、その横におしゃれな玄関灯があります。


 石組みはくすんだレンガ色で、ところどころワンポイントのように、濃茶のレンガが散らばっています。

 チョットいいセンスの、メルヘンなお家です。


 ドアをノックしますと、「お待ちになって」と声がします。

 しばらくするとドアを開けて、それは品のいい二十七、八の、金髪の女の人が出て来ました。


「あら、素敵な娘さんだこと、私になにか御用ですか?」と聞きましたが、私は用件まで考えていなかったので、ちょっと戸惑っていました。


「あぁ、私に会いに来てくださったのね、黒の巫女様」

 と、あっさり云われました。


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