第七章 魔女

山賊街道


 朝から小雪さんが、若い衆を鍛えています、鬼軍曹のようです。


 約束通り、私たちは若い衆に武術、若い娘にお色気を指導している次第で、特に若い衆は可哀想に思えます。

 が、やはりそこは漁師さん、日頃鍛えた肉体がさらに引き締まって、顔つきもキリッとしてきました。

 なんか頼もしそう。


 小雪さんは、三日しかここに居れないのは、町の人も承知したようですね。

 小雪さんが三日、ビクトリアさんが三日のスケジュールでこなしています。


 これならビクトリアさんの、エラム流の実践の戦闘方法も伝授できるでしょう、鬼に金棒ですか。


 若い娘のハートを、射抜ける輩も出て来るでしょうね。


 サリーさんの若い娘へのお色気指導は、効果は絶大と太鼓判を押せます。


 三人とも妙に生き生きとしているのです。

 このハイテンションの解消を、私が引き受けるのかと思うと……

 昼ごはんと晩ごはんに、少々精がつくものを食べなくてはと、考える次第です。


 ミハエルさんに、本当にこんなのでよいのかしらと聞きますと、

「町に活気があるのが分かるじゃろう?」

「わしらはヴィーナスさんに感謝しておる、これで若い衆も、娘と祝言を挙げるものが出てくるじゃろう」

「ところでたまには違う娘はどうじゃ?」


 この爺、「いや十分です」と言うと、ニヤニヤして、「だろうな、今日もあの三人はハイテンションじゃな、生き生きしておる、ヴィーナスさんは体力の鍛錬かの」

 この爺、そこまでいいますか。


 小雪さんが帰ると、入れ替わりにアリスさんがやって来ます。

 アリスさんは、といいますと、町の子供たちを集めて、学校を開いています。

 アリス先生は、どうやら算数を教えているようですね。


 ミハエルさんは、「アリスちゃんは可愛いのう、おるだけでそこらへんが明るくなる」とよくいっています。

 アリスさん、今しばらくは、そのまま楽しんでいてください……


「ところでヴィーナスさん、もう一人の魔女の噂を聞いたことがないか?」

「わしは最初、その魔女さんかと思ったが、会って見てはどうじゃ?」

「ヴィーナスさんは、世界を見聞していると聞いている、ならばと思うが?」


「確かにそうですね、興味のある噂ですね」

「そろそろ私も旅をしなければと、思っていましたから」

 私たちは協議の結果、その魔女さんに会いに行くことにしました。


 まただれが供をするかで、多少揉めましたが、ミハエルさんの情報では、その場所は非常に治安の悪い所のようです。

 そこへ行く街道は通称、山賊街道と呼ばれ、通るには傭兵を多数雇って、それこそ命がけで行く街道のようです。


 そういうことで、お供は傭兵経験のあるビクトリアさんで決まり。

 まぁ、多少文句もありましたが、みんな致し方ないと理解しているようです。


 でも、帝国の治安維持能力は劣悪と分かりました。

 皇帝は一体何をしているのでしょうね、後宮へ入り浸りと聞いています。


「まったく、スケベなエロ皇帝ですね」といいますと、サリーさんが、「お嬢様に云われたら皇帝も怒りますよ」と、痛烈な嫌味を云われました。

 サリーさんひどい。


 ビクトリアさんが、

「サリーはしばらく、あるじ殿と居られないので、拗ねているのさ」


 そうですか、サリーさん。


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