亡霊の館


「ビクトリアさん、どうしましょう?」

 ビクトリアさんが、

「私は構わないが、小雪とサリーに相談したら?」


 私はビクトリアさんに耳打ちして、

「では相談して来てください」


 ビクトリアさんは頷いて部屋へ戻り、一旦リリータウンで、皆と相談して来てもらいます。


 私はお爺さんに、

「しばらくお待ちください」と言い、その場でお茶を飲むことにしました。

 しばらくしてビクトリアさんが戻って耳打ちなど……


 私は町の皆さんに言いました。

「私は確かに魔女と呼べるでしょう、私がここにいることを一切喋らないと誓えるのですか?」

「破った代償は正直、皆様の命になりますよ」


 ここまで言えば、皆様の覚悟の程がしれましょう。

 お爺さんが、

「では覚悟を示しましょう、町の衆を集めろ」


 広場に町の人全員が集まりました。

 お爺さんが、

「皆に言う、魔女さんはわしらに、魔女さんのことを、他の者に喋らないことの、覚悟を示してくれといわれた」

「わしらはどうすれば覚悟を示せるか」


 一人の男が立ち上がった。

 無言で上着を脱ぎ、ナイフを私に見せ、胸に傷をいれた、血が流れていく。


 次に一人の女が立ち上がった。

 無言で片方の肩を見せて、ナイフを差し出して傷をいれて立ち去っていく。

 無言の誓約というらしい……


 男も女も子供たちさえ、無言の誓約を繰り返していく。

 私は息を飲み、十人ぐらいのところで、手を振って止めさせた。


「分かりました、皆様の覚悟、しっかり受け止めました」

「流された血に対して、私は誓いましょう、ここに居を構えましょう」

「ここまでしていただいて、まだ真実は申せませんが、私の名はヴィーナス、皆様とともにありましょう」


 私は手を差し伸べて、傷ついた人の治療をイメージしました。


 私は皆の目の前でドアを開き、サリーさんと小雪さんとアリスさんを呼びました。


 私はいま、お爺さん達、町の代表の方々と今後を相談しています。


 まず私のことは秘密ですので、住む場所は大っぴらにできません、だれが来るか分かりませんから。

 するとミハエルさん、これはお爺さんの名前ですが、天使の名前なんて大胆ですね。


「町のはずれに、亡霊の館と呼ばれる場所がある、ここなら見るからに危ないので、だれも近寄らない」

「皆もそのように振舞うようにする」


「ヴィーナスさんがご在宅のときは、入り口側の二階の左の窓を開けてくれ、町によそ者がいなければ、皆が集まるようにしよう」

「ヴィーナスさん以外の方がご在宅のときは、入り口側の二階の右の窓を開けてくれ」


 私はアリスさんを呼び、

「アリスさん、私の代わりに時々、ここの管理をお願いね」


「ご苦労ですが、小雪さんもお願いします、なにかあれば、この町を守ってください、できますか?」

と聞くと小雪さんが頷きました。


 町の名はキリー、私はこの世界に住む場所を得ました。

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