大宴会


 しばらく待っていましたが、他のウミサソリキングが出てきません。

 いつもなら、必ず死骸を食べに来る筈ですが、一匹も来ません。


 爺さんが、「どうやら全滅したらしい」と云いました。

 私たちに向かって、「ご苦労様、ありがとう」と丁寧に頭を下げます。

 爺さん、こういうこともできるのですね。


 この後はドンちゃん騒ぎです、大宴会です。

 もともと傭兵だったビクトリアさんは大はしゃぎです。

 煽るようにお酒を飲んでいます、どうも底なしです。


 若い衆にお酒を強要しています、

「飲み勝ったら抱かせてやる」と挑発するので、若い衆が挑みますが、返り討ちにあっています。

 敗者の山が築かれていますね。


 小雪さんに、ビクトリアさんは大丈夫でしょうかと聞くと、「絶対大丈夫です」と云いました。


 お爺さんが、「そのままにしておいてやれ」と云います。


「あの嬢ちゃんは根っからの戦士じゃ、血を見た以上、発散せねばならぬ」

 なるほど、すこしこの爺さんを見直しました。

 これからまたお爺さんと呼びましょう。


「魔女さん達がまともではないのは分かる、これからどうするかも聞かん」

「しかし、わしらは魔女さんたちが好きじゃ、好きなだけ居てくれてもいいし、好きなときに訪ねてきてくれ、なにかあったら此処へこい」


 お爺さん……ありがとう……


 それから、三日も酒宴は続きました。

 途中、小雪さんが柄にも無く、殊勝に町の人々に挨拶をして帰りました。

 とくにお爺さんへ、キスなんかしていました。


「お爺さん、若い娘の口付けの味はいかが?」と意地悪く聞きますと、「柑橘系の味じゃな」と、洒落たことを云います。


「魔女さんもこの後、しんどいのう」というので、「なにが」と聞くと、「あれじゃ」と、ビクトリアさんを指差します。


「あの嬢ちゃんは何もいわんが、トラウマが酷いのう」

「あのサリーという娘もそうだったが、魔女さんのおかげで、正気をたもっとるように見える」

「魔女さんが居らんと、狂ってしまうのではないか」


「あの小雪という嬢ちゃんはもっと異常じゃ、魔女さんのためなら何でもしそうじゃ、その一念でやっと生きておるわ」

「魔女さんが死ぬと、あの三人も死ぬぞ、多分アリスという娘もそうだろう」


「一番異常なのはあんただ、なにかとてつもなく重いものを持っている様に見える」

「はけ口がないんじゃ、人間溜め込んだものを出さんと破滅するぞ、破滅は忍び寄ってくる」

「気をつけることじゃ」


「だから意地を張らず、女が好きならば女を愛せ」

「あんたらは異常なんだから、異常でよいではないか」

「暴走しなければ良いんじゃ」


 私は迷いが晴れた気がしました。

 そうでした、あるがままでした。

 自分のしたことは自分で受ければいい、批判は甘んじて受ければいいのだ。


 ビクトリアさんを、今夜は誘いましょうね。


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