図星は腹がたつもの


 お爺さんは困った顔をしました、どうやら退治は長くかかるようです。


 私はため息をして、

「ではこうしませんか、妹を迎えに供のものが二人きます、私がその供のものと残りましょう」

「ただ一人は妹の守役ですので長くはおれませんが、もう一人は私の護衛でもあります」


「最後は二人ですが、退治するまでここに滞在しましょう、その間の経費はそちらでもってくれますか、おいしい料理付ですよ」


 お爺さんは分かったと頷き、

「皆、聞いたとおもう、魔女さんと契約できた、協力してくれ」


 そして若い衆に、

「宿へ行って一番いい部屋を用意しろ、飯も一番じゃ、若い女も、五人ほど用意しろ」

 若い衆は脱兎のごとく走っていきました。

「魔女さん、ご覧の通りじゃ、約束は守る」


 若い女って、誤解したままじゃないですか!

 お爺さんはサリーさんを見ながら、「たまには違う女もいいぞ、わしの目は節穴じゃない」


 本当にこの『くそしじい』!

 これからは、『じじい』と呼んであげます。


 私は毎日、せっせとサソリ退治をしています。


 爺さんの戯言が拡がったのか、私の周りは女性だらけです。

 「ヴィーナス様、素敵」とかの声が聞こえます、だんだんエスカレートしています。

 当然、サリーさんも同じ状況です。


 サリーさんが、

「同姓に告白されるのも、いいものですね♪」

「お嬢様もこんな気持ちですか?」

 

 アリスさんはどうしているかというと、さすがに漁師は健全です、ロリータ趣味などありません。

 皆に「可愛い」と頭を撫でられて、ぶりっ子全快です。

 女性にも人気があり、あちこちでお菓子をもらっています。


 あっというまに、アリスさんとサリーさんの期間が終わりました。

 私たちは、町のはずれまでお出迎えです。

 小雪さんとビクトリアさんが歩いてきました。


 ビクトリアさん、ボウガンを抱えていますよ。

 サリーさんが事情を説明しています。


 小雪さんが、

「事情は聞きました、私はマスターをなんと呼びましょう」

 と聞いてきたので、「名前で呼んでください」と、お願いしました。


 サリーさんとアリスさんとは、しばしのお別れです。

 どこから聞いたのか、多くの町の人が見送ってくれます。

 ここはいい町です。


 アリスさんが、爺さんにお別れを云っています。

 爺さんが、

「アリスは良い娘じゃ、元気でいるのじゃぞ、魔女さんの毒牙にかかってはならんぞ」

 などと云っています。


 どこまでも爺さんには腹がたちます!

 図星は腹がたつものですから。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る