惑星エラムについてのノート 其の一


 私は小雪先生が作った、エラムの常識という本を読んで、そこに書いてあることと、エラムの地政学を要約し、私の考察も入れてノートにまとめています。

 久しぶりでしょうか、ノートをつけるのは。


 そもそも私は理系の人間、このような文系は苦手です。

 でも覚えなくてはいけません、皆に私の学問に対する姿勢を示さねば……


 その私のノートには、次のように書かれています。


 文明は古代ローマ並で、惑星の大きさは地球よりほんの少し小さい。

 したがって重力もほんの少し小さいが、大気は維持できている。

 海洋がやや浅いのと広いせいで、熱帯雨林が殆ど無くても酸素は供給されている。


 小さい月が二つあるも、潮汐力は月よりもはるかに小さい。

 したがって干満の差はあまりない。

 公転軌道は地球と同じ程度の一天文単位。


 恒星も太陽よりやや小さく、多少寒冷な気候。

 自転軸もあまり傾いてなく、四季もない、代わりに乾季と雨季がある。

 赤道付近は地球の亜熱帯ぐらい、主な大陸は一つで、この赤道にある。

 大きさは北アメリカより二割ぐらい大きく、概ね楕円に収まり、他は広大な海洋である。


 プレートは六枚あり。

 大陸はプレートにまたがっており、中央でぶつかって長辺方向に巨大な山脈を作っている。


 大陸の短辺方向両側は、他の大陸プレートに潜り込んでおり、深い海溝がある。

 北部には細長い列島が存在する、また南にはニューギニア並の大きな島がある。

 またプレートの間にはホットスポットがあり、島々が存在する。


 その内の一つはブリテン諸島並みで、大陸より高緯度に位置し、さらに寒い。

 もう一つ赤道直下に四国の半分ほどの活火山の島があり、ここはその関係か熱帯に近いらしい。

 大陸より西には、南回帰線寄りに、かなり大きな諸島があり、大陸の裏側にはグリーンランド並の島が幾つか散在している。


 知的生物は地球と同じで類人猿より、(あるとき突然に)進化した人類で、どうやら厳しい生存競争を勝ち抜いた人種のように思われる。


 平均寿命も、種としては地球人類と変わらないが、医学の進歩がない分、多少短い。


 バンアレン帯も多少弱いので、染色体異常が起こりやすい。

 とくにY染色体が壊れる、XO染色体の固体が多い(女性が多い)。


 結果、人口増加は起こりにくく、労働人口の余剰などの結果におこる、資本蓄積による工業化は起こらない。


 一般人で捕虜等になったものは奴隷身分となるが、主人が許せば子孫も残せ、自身の労力の対価で、身分を買い取ることも可能である。


 現在、主要国家は三つで、どれも封建制、基本的には男尊女卑である。

 例外は宗教で、黒の巫女が神の代理であることが原因。

 そのため、仕える最高神官は女性からしか選ばれない。


 宗教は一つで、神聖教と呼ぶ。


 創造神とその代理人の巫女(黒の巫女)が絶対で、それに仕える神官グループとして、賢者とよばれる神官がいる。

 その筆頭を大賢者と称する。

 その権威は絶大だが、権力に介入はしない(世俗に交わらない)。

 しかしその権威上、各国の調停等はすることもある。


 中央神殿は黒の巫女神殿と称す。

 この中央神殿は、中央山脈の中の高原にある、小さな湖を囲むようにある。

 その湖には小さな島があり、黒の巫女の御座所がある。


 創造神とその代理人の黒の巫女の下に、各国に神聖教の教会があり、建前として国の権力者がその代表を兼ねる。


 天変地異があまりなかった関係で、海洋には(特に沿岸部)巨大な生物が見受けられる。


 各国家間では、小さな紛争が常時続いており、女性的で陰湿な権力闘争も多発している。

 このため民衆の生活は困窮している、さらには向上心が薄いため無知である。


 どうやら文明の進歩は望み薄のようである。


 特記すべきこととして、この世界には魔法が存在する。

 魔力の源泉たるマナについては、だれも正確な知識はない。

 その魔法は、呪文を唱えることにより発動する、ゆえに正確な呪文を唱える必要がある。



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