小雪先生


 小雪先生が、

「マスター、お願いがあります。教室を作りたいので、まずマスターの力で、異空間倉庫を作ってください」


 異空間倉庫?


「マスターのイメージの練習になります、本来ここでは魔法は使えませんが、イメージはエラムでの魔法の基礎になります」


「これは今のエラムの人間にはできません、危険ですので封印されている状態です」

「イメージの基本は、分子の取り扱いの具現化したものです、これ以上の説明は私にはできませんが、マスターの化学の知識なら、理解可能とは聞いています」


「さらに物理の知識をお持ちですので、素粒子を取り扱えるそうですね、今のエラムでの魔法は、この粒子の取り扱いを自動化した、簡単なものです」


「今回は教室程度の、立方体の空間をイメージし、中の物質を侵食していくイメージを続けてください」

「後はこちらで、現実のように操作します」


 いわれた通りにイメージしました。

 するとなにかできたような感じがするのです。

 小雪先生が、

「できたようですね、では、その空間の入り口のドアをイメージしてください」

 両開きドアを、その空間の隅にイメージしました。


「そのドアを、このリリータウンのお好きな場所に、繋ぐイメージをお願いします」

 私はそのドアを屋上庭園の塀の部分にイメージしてみました。

「ドアを固定するイメージを」

 そしてドアができました。


 小雪先生が、

「いかがですか、イメージが実現していく感覚は?」


「手順が重要ですね、エラムでも実現可能なのですか?」

 と聞くと、

「基本的には同じですが、エラムではもっと精密さが要求されます」

「しかしメッセージが湧いてくるはずですので、そう困らないでしょう」


「さあ、次へいきましょう、まだこの空間は箱ですから」

 私はできた異空間倉庫に入り、教室をイメージして完成させました。


 いまサリーさんとビクトリアさんは、算数と理科の勉強中です。

 二人ともお腹を減らして、この食堂へ戻ります、なににしましょうか、二人の好きな物を頭に浮かべます。


「お姉さま」とアリスさんが呼びます。

 アリスさんから、「マスター」と呼ばれるのは違和感があるので、他の呼び方に変えてくれませんかと頼むと、アリスさんは、その可愛らしい顔をかしげながら、しばらく考えていました。


「お姉さま、ではおかしいでしょうか」と云います。

 ……お姉さま……照れてしまいますが、なにかキュッとくるものがあります。


「お姉さま、今日は何にいたしましょう?」

 ちょっとチケットが高いけど、西洋風でいきましょう。


 トマトの水煮缶と、ツナ缶のサラダ

 ミックスベジタブルと、液卵のミニオムレツ

 冷凍食品のとんかつ

 クラムチャウダー缶のスープ

 パン缶のパン


 『とんかつ』は、そもそもチケットの対象なのか不安でしたが、ぎりぎりセーフのようで購入できました。

 『液卵』も、なにげにチケットで購入です。


 私はせっせと五人分作っています。

 小雪先生も食べるのですが、先生の分も私のチケットなの……

 大体なんで私が、食事の準備をしているの?


 でも、ルンルンとご飯を作っている私。

「お姉さま、楽しそう」

 そうアリスさん、お料理は楽しいですよ、女の楽しみよ。


 サリーさん達がお食事にやってきます、タダ食いの小雪先生も一緒に。

「サリーさんもビクトリアさんもご苦労さまです、お腹が減ったでしょう、今日はご馳走ですよ、と・ん・か・つ・です♪」


 ビクトリアさんなんて、物もいわずにがっついていますが、後ほど婦人学あたりで絞られますよ。


 サリーさんに、「美味しいですか?」と聞くと、

「はい、お嬢様の手作りですから、美味しいに決まっていますわ♪」

「ビクトリアと違って、もったいなくてゆっくり味わって頂いています」


 ビクトリアさんが、「どうせ私はガサツですよ!」と拗ねていますね。


 この後、私はサリーさんたちと午後の勉強に行きます。

 アリスさんに、午後のティータイムの段取りをお願いして。


 アリスさんが私たちの後ろ姿を、羨ましそうに見ているのを、私は知っています。


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