ハ・レ・ム?


 ハ・レ・ム?


 私の耳は、可笑しな響きを聞き取りました。

 確かにここは女ばっかりですが、これは間違いです。


 ハ・レ・ム?


 どこかに男がいるのですか?


 アリスさんは私の怪訝な顔には構わず、極めて機械的に続けました。

「よい機会です。今からの話を頭に入れておいてください」


「サリーさんも、ビクトリアさんも、失礼を承知で申し上げますと、お二人は基本的にはマスターの奴隷です。」

「マスターがどのように、この制度を毛嫌いされるとしても、事実は変わりようがありません」

「私もどのような命令にも、答えるように躾られています」

 皆さん、頷いています。


「マスターは異世界の男性でした。それがこの世界の呼びかけにより、無理やり転移させられました」

「肉体を再構成して、現在のお姿、女性になっていただきましたが、これは精神衛生の上からも、生理的な欲求からは、負荷がかかっています」


「どこかで発散させなければなりません。マスターはこの世界の行く末を決める方、精神に負荷がかかった状態での判断は好ましくない、そう思われます」


「判断なされる場合、マスターの種族の、冷徹で冷静な世界観が必要になります、マスターはご自身の世界での叡智です、そのことに対してマスター自身、否定はなさらないでしょう」


 この少女は、最初の手紙の内容を知っている……


「サリーさんもビクトリアさんも、この世界では異端の存在です。しかも男性に対しては心理的なトラウマをもたれています」

「マスターだけを愛することができる、可能性を秘めていました」


「この場所へ承知の上で来た以上、このようなことはご自身で望まれたはずです」


「私たちはマスターのもの、マスターに見つめられると胸が高まります、皆さん、思い当たることがおありでしょう」

「マスターが私たちを愛さなくとも、私たちは愛します」


「悶々とマスターに愛されることを、こがれながら時を過ごすことになります」

「マスターは私たちに責任が発生しています。もっともマスター自身、生理的欲求が発生するはずです」


「愛し方は登録者の個性によると思われます」


「登録者には、マスターに愛されるように努力を要求します」

「マスターに愛されると幸福になるのです、サリーさん、そうだったでしょう?」


 サリーさん頷いています。


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