アリス


 黒髪のおかっぱに、彫りの深いオリエンタルな顔立ちの、目が印象的な少女です。

 可愛いいこと、このうえない娘さんですね。


 可愛いいエプロンドレスを着て、小さい靴を履いています、おとぎの国の少女のようです。


 その娘さんは、

「ようこそマスター、お久しぶりですね、サリーさん、初めてお目にかかります、ビクトリアさん」

「私はこの第二倉庫の住込みメイド、アリスと申します」


「サリーさんも改修された街は初めてでしょうから、この街の構造と生活方法をご案内いたします」

「その前に休憩なさりませんか、ビクトリアさんは、カルチャーショックが大きいようにお見受けしますが?」


 立て続けに一人でしゃべりました、少しおませな雰囲気が漂います。

 その街は小規模なビルのようで、後でアリスさんに聞いたら、10M四方の立方体だそうでした。


 アリスさんが正面の玄関ドアを開きますと、すぐに18畳ほどの部屋があります。

 電磁調理器などがおかれた、やや小ぶりの機能的なキッチンと冷蔵庫など、地球のとある家庭の台所が再現されています。


「マスターの世界を再現しています、サリーさんもこのような物は初めてでしょう?」

「使用方法はあとでマスターにお聞きください」

 そこには、小さい6人用の食卓も置かれていました、私は自然と、椅子をひいて座ります。


 アリスさんが、

「インスタントでよろしければ、お飲み物をおつくりいたしましょうか?」

 と私に聞きましたが、見ればサリーさんもビクトリアさんも、唖然としています。


 二人とも私の世界の生活なんて、想像の範囲外だろうとおもいます。

 とりあえず、サリーさんとビクトリアさんへはココアを、私はロイヤルミルクティーをお願いしました。


 サリーさんとビクトリアさんは、カルチャーショックから立ち直って、アリスさんの行動を穴のあくほど、それもこげるほどに見つめています。


 アリスさんがケットルに水を入れ、電磁調理器で湯を沸かしますと、ビクトリアさんの驚くこと、見ていて面白いぐらいです。

 サリーさんも多少は知っていたのでしょうが、やはり驚きの顔が見えます。


「ビクトリアさん、魔法ではありませんよ」と云うと、アリスさんが、「ここでは魔法は使えません、すべての動力は電気と人力です」


 サリーさんが、

「お嬢様の世界はこのようなものなのですか」と問うので、

「これは普通のどちらかというと独身の者が、学問や仕事などで仮に住む、居住区みたいなものを再現したようです」

 と、アリスさんに振りました。


「確かにそのようなもので、あえて表現すれば女子寮ですね、なんたって男子禁制ですから」

 そこまではいいのですが、そのあとがいけません。


「さらに言わせていただきますと、マスターのためのハレムでもあります。」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る